病院では本当の漢方治療はできないのではないかと思った理由

僕は常々、ブログでは漢方は東洋医学であって、西洋医学ではないので、病院がやっている西洋医学の病名や症状だけをあてはめて漢方薬を選ぶ方法は、漢方ではないし、漢方薬の副作用は「体質と合っていないと起こる」ので、そういった安易なマニュアル処方は危険ですよ。とお話しています。

それ以外にも病院で漢方をやろうと思ったら難しいという決定的な理由がこの間、来られた患者さんでわかりました。

その患者さんは、不妊症で悩んでおられる方です。
聞けば、病院で当帰芍薬散を処方されたとのこと。

聞いても無駄だとは思いつつ、一応・・・
「うちのような体質を判断するための問診票をとってもらってから漢方薬を処方してもらいましたでしょうか?」
とお聞きしたら、
案の定「いいえ、ただ不妊に良いとか、不妊症には使う漢方薬だとかで処方してもらいました」

聞くまでもなく病院定番の思考停止状態のマニュアル処方ですね。
不妊症なら23番の当帰芍薬散か、106番の温経湯。
右から左の横流しのような処方方法です。

いつもよくこんな、素人の誰でもできそうな処方方法やってて医療者としてのプライドがズタズタにならないのか。
その辺がいつも不思議です。
それとも「どうせ漢方薬なんて効かないし」なんて思ってるからテキトーなのかな。
それはそれで、医療者として、どうなんだ!ってなりますけどね。

その方もご多分に漏れずに当帰芍薬散。
ここまでは、病院のよくある話で「漢方薬って東洋医学的な体質を考えて選ばないといけないんですよ」って話すところなんですが、その方の体質を全体的に見て思いました。

その方、現在は不妊症で悩んでおられるのですが、不妊症の悩み以前からアトピーで悩んでおられていました
そして、様子をみて、体質を見てみると、熱が入りすぎている感じ。

「ひょっとして、当帰芍薬散を飲み始めてしばらくしてから湿疹がかゆくなってません?」
そう、お聞きするとやはり、その頃から、かゆくなっているとのこと。

当帰芍薬散の役割は温める温補、血を補う補血、水の巡りをよくする利水。

漢方薬の属性は陰証といって、どちらかというと冷えが強く、熱や温かさを補っていく処方です。

そして、この方に冷えのことをお聞きすると「足がすごく冷える」とのこと。
漢方を勉強してないマニュアル治療だと、「ほら、冷えるっていっるじゃないか」となって、温補の当帰芍薬散もアリかもと思うところでしょう。

しかし足の冷えだけでなく全体をみたら「身体全体の冷え」ではなく「上熱下寒」です。
つまり、下半身は冷えるけど、上半身は逆に熱がこもるタイプ。

なので、顔やら首やらの湿疹がひどくなっていたのですね。

なぜ、こんなことが起こるのかというと、先ほどからしつこい位に言ってる。思考停止のマニュアル処方も問題ですが、それよりも、根本的な問題は西洋医学が身体を部分、部分にわけて婦人科とか皮膚科とか、身体をバラバラに分けて考えていることです。

漢方は全身の症状などをみて全身のバランスを整えて治療します。
だから、そもそも婦人科とか皮膚科とか、分けて考えちゃダメなんですね。

例え、患者さんの今の悩みが不妊症でも、もともと、もっている体質をみながら、今の不妊症がスムーズに行えるようにしていかなければいけません。
しかも通常は、まずアトピーに当帰芍薬散は使いません。
どちらかというと身体の赤みやかゆみが強かったら当帰芍薬散は、まず避ける処方として考えてもいいくらいです。

そういう漢方の原理原則みたいなのを無視すると今回みたいな、不妊症の漢方薬を出したつもりでアトピーはひどくするという状態を引き起こします。
これって、全身のバランスがとれて、健康になっていると思います?

悲しいことに全身のバランスをみていくのが東洋医学なのであれば、身体をより細かく部品にわけてバラバラにみていくのも西洋医学の大きな特徴なのです。

東洋医学である漢方薬を処方するのにマニュアル処方なんて治療以前の問題ですが、例え、まじめにやろうと思っても、婦人科とか、皮膚科とか人間の身体を分けて考えてはダメです。

西洋医学で漢方をやろうと思ったら総合診療科ですね。
科といっても、診るのは全身。身体を全部みて判断する。
「皮膚だけ」「女性ホルモンだけ」「胃腸だけ」では、漢方はできないではないかと今回のことで気づきました。

今の日本で開業するときに皮膚科、胃腸科などと分けないで、総合診療としてできるのかどうかは、わかりませんが、漢方を「真剣」にやりたかったら総合診療科としてするべきだと思いました。

でないと、今回のような事が起こり、いつまでたっても漢方薬では効かせられないので、テキトーに長めに飲んでいてもらう。といった状態が続くのではないでしょうか。