漢方薬を使った不妊治療の間違い

漢方は世間で非常に誤解されていると思います。

なぜなら、病気を治すはずの医者自体が、漢方薬を検討違いの間違った使い方をしているからだと僕は考えています。

常識的に考えたら、人生の半分位、勉強漬けでやってきた偉い人がやってるんだから、間違ったやり方なんかしてるはずがない。と思いたいところですが、伝統的な漢方をやってる僕から見ると、全く漢方とは異質な医学をやっているように思います。
実際に漢方や東洋医学に関しては、医者は、特別、独学をしていなければ、大学等で、ほぼ学ぶ機会はありません。素人の人と条件は大差ないのです。

何が異質かっていうと、漢方薬を処方する際に「不妊症」には、この漢方薬とか「アトピー」には、この漢方薬といったような病名で選ぶような方法。
そんな方法は漢方には存在しません。

なぜ、そんな方法は存在しない。と言えるかというと「漢方が個人、個人の体質を分析し、その体質に合った漢方薬を選ぶ」という方法は、およそ2千年前に確立されているからです。

そして「不妊症」とか「アトピー」という病名は、西洋医学のもので、西洋医学は、先ほどの漢方医学が確立された、およそ1800年後に出てきたものだからです。時間も違うし場所も中国とヨーロッパと全然、違うのです。

でも、そういうことを言うと、東洋医学を理解できない人が「現在は、科学が発達しているから、現在の西洋医学の方法で漢方薬を解明すればいいじゃないか」と意味不明なことを言い出し始めますが、それは、漢方が医学として未熟であいまいだった場合です。

でも、僕が勉強した限りでは、漢方は古臭いですが、2千年前に、すでに診断から処方まで、その方法は確立しているのです。
あいまいな事はありません。

方法が出来上がっていて、西洋医学よりも1800年も余分に経験を積んだ医学の大先輩なのだから、わざわざ西洋医学の方法で解明する必要性がないのです。

となると東洋医学を理解できない人の言い訳にしか聞こえません。
実際、体質を分析しないで、病名や症状だけで漢方薬を処方している先生と話していると、「体質を判断しない」のではなく、東洋医学がよく理解できないから「体質判断できない」ようです。

そんなわけで、漢方って医学の第一人者っぽい医者が率先して間違った方法を広げているので、ものすごい誤解が広がってしまっているのではないかと思っているのです。

なので、不妊症治療の病院でも「当帰芍薬散」や「温経湯」を体質を見ない(見れない)で処方したりしています。

少し詳しく考えてみましょう。

漢方が生まれた2千年前の不妊症ってどんな病気でしょうか。
多分、子を生むのが当たり前的な時代だったろうから、25歳位で不妊症的な扱いだったかもしれません。
安土桃山時代で人間50年ですから、もっと若くないといけないかな。

そうしたら、今の時代でいったら若い年代になりますが「体質」をみないで「不妊症」という西洋医学の病名で処方するということは、若い人で2年生まれなかったら、不妊症決定なのでしょうか?

不妊症というのは「授かりにくい」という状態を示しているのであって、100%、その人の体の状態を表しているものでありません。

ただ単に夫婦間の仕事によるすれ違いや生活環境の問題かもしれないし、他の大きな「病気」が原因かもしれない。
そして、実際は、全部の原因が絡みあっていたりするのです。

不妊症という言葉の中には、「女性側の体が、こうこう、こう悪い」なんて設定は、これっぽっちもないわけです。

そのいろいろな「不妊症」という意味合いの状態に対して、当帰芍薬散とか、温経湯が効く?
おかしくないですか。

夫婦間の仕事によるすれ違いや生活環境の問題が当帰芍薬散や温経湯で治るのでしょうか。
それが当帰芍薬散で治ったらすごいけど。

つまり、体質を考えないで「不妊症」という状態だけに対して漢方薬を処方するということは、そういうことなんです。

ただ中には「いやいや、某メーカーさんの資料に当帰芍薬散は、女性ホルモンを活性化すると書いてあるよ」という得意の机上の理論があるかもしれません。

これにも2つの問題があります。
1つは、ホルモンの活性とその患者さんの関係があると言えるのか?
不妊症だからといって、その人が「絶対にホルモンが原因」と決められない(わからない)のです。

もう一つの問題は、その某メーカーさんがホルモンが活性化するという証拠を出した臨床データの対象がネズミなんですよ。ネズミ。
その病院に怒ってもいいですよ。「はぁ、なんで私とネズミを一緒にしてるの?」

この臨床の滑稽なところは、わざわざ、科学的臨床を「ネズミ」でやっているところ。
漢方自体が、そもそも、2千年間の壮大な人体実験で成り立っているのに。

大昔から当帰芍薬散を「人間」に使ってきて、何年も何年も成功と失敗を繰り返して、「ある体質の人だったら、当帰芍薬散が合う」という理論をつくりあげてきたのです。

その体質を導き出すために漢方には三陰三陽や八綱弁証、気・血・水弁証などなど、さまざまな体質を分析する方法があり、漢方薬を選びだす方法が記されているのです。

それを無視して、わざわざ「ネズミ」で実験してるのですよ。
最早、メーカーさんコントの域。

普通に考えたら2千年間、人体実験をしてきて、それを生かす理論や方法まで記されているのだから、そっちを勉強したほうが早いって考えるじゃないですか。
仮に漢方が古臭いからダメっぽいと思っても、元の方法を理解し、やろうと思えば、いつでもできる状態になってから、次の方法ですよね。

なのに先に「ネズミ」の実験結果の方をとって「不妊症」という、その人の「体質」とは何の関係もない病名で漢方薬を処方する。

なんで、そんな周りくどい、よくない方法をわざわざ、取るのか?

それは多分、東洋医学理論を理解できないし、体質分析ができないというのが正直なところだと思います。
でも、体にやさしそうな漢方薬は使いたい。
そこで苦し紛れに出てきた方法が、病名や症状だけ、パパゥ!と聞いて処方するマニュアル漢方。

東洋医学が、なかなか理解できないというのは、医療業界の医師や薬剤師の中では、結構、普通のことなのですが、漢方の東洋医学的な体質判断をしようと思ったら、医者の大嫌いなコミュニケーション能力が非常に高くないといけなかったり、知識というよりも楽器やスポーツ、料理に近いような感覚感が必要だからではないかなと僕は考えています。

要は漢方は、本の内容をおぼえてテストで良い点とっても、あんまり意味がないのです。
ピアノで感動させたり、スポーツでエクストリームな技を完成させたり、おいしい料理が作れたり、そっちが必要。

楽譜やレシピを完璧におぼえても、実際にやった時に、できない人は、いつまでたってもできない。という酷いジャンルの医学が漢方だと思うのですよね。

だから、当帰芍薬散を飲み始めてから胃痛や胃もたれのある人に病院の薬の胃腸薬を合わせて処方するという、間の抜けた処方をしても、おかしいと思うことすらないレベルなのです。

漢方を1mmだけ、かじっていてもわかるはずの「当帰芍薬散は体質と合っていなければ、胃痛や胃もたれを起こす」逆もしかりで「当帰芍薬散を飲んで胃痛や胃もたれを起こすのであれば、当帰芍薬散は合わない体質である」という初歩のミスに気づきもしないのです。

現在風な異質な病名や症状で処方する漢方もラッキーで当たることもありますが、そこは医学なんですから、専門家は専門家らしく、東洋医学の診断、分析を行い、漢方薬の選薬をやるべきではないかなと思います。

なんか伝統漢方が西洋医学にバカにされているようで、寂しいんですよね。