その場の足元しか見ない不妊治療

「原因がよくわからないけど、月経が長引いて、なかなか来ない。今回の月経は来るのだろうか?」
「排卵検査をしてもらった時に、まだ排卵していないが、これから排卵するのだろうか?」

不妊症の検査に行った時に、月経周期がおかしくなっていたり、排卵しているはずが、していなかったりすると、この先、どうなるのだろうか。不安に思います。

不安なので、当然、医者に聞きます。
「月経はどれくらいで来そうですか?」
「今回はどれくらいで排卵しそうですか?」

病院では、いろいろ検査するわけですから、当然、今後の状態も知りたいところですよね。
でも、返ってくる答えは「わかりません」
検査で見ると「今は内膜が何mmで・・・」「今は卵包の大きさは何mmで・・・」

「いやいや、私は医学の素人なので、今がどうとか、検査データがどうとか言われてもわかりません。単純にこの先、どうなるのかを知りたいのです」

患者さんは、このセリフを医者に言いたいのですが、直接、言い合えるような雰囲気はゼロですので、うちで「これって、どう思います?」と怒っておられます。

でも、こう言われると、医者ってこう答えるのです。

「そんなのわかりません!」心の中では「良くなる保証なんて、誰も、できるわけないじゃないか!」

こういったやり取り、僕も思い出すことがあります。

うちの息子が3歳のときに、ものもらいができました。
結構、ボッコリと腫れたので、昔風に針でブチュッとつぶしてもらって、薬、塗っときゃ治るだろうと病院に連れて行きました。

そうしたら、「今はそんな治療はやってない」とのこと。よくわからないですが、ちょっと逆ギレ気味に言われました。

で、今のネット時代だったら素人でも考えつくわ!っていう感じの処方でタリビット軟膏を処方されました。
それで、言われた通りに塗って、1本使い切りました。
でも、状況は何も変わらず。
同じヤブに行っても不安なので、違う眼科へ行きました。

しかし、ここでも同じタリビット軟膏の提案。もちろん、1本使って、1mmも変わってないと伝えましたが・・・
「他に治療方法はないのか?」というと今度は大袈裟に「全身麻酔して手術という方法は可能だけど傷跡が残るよ」と。
もう、最近は医者のこのマニュアル感にも悪い意味で慣れてきました。
同じ薬を漠然とゴリ押しか、手術するの?と大袈裟に騒ぐか。

ただ、薬はすでに3歳に子に対して1本、使いきってるので、今度は、見通しと見解を聞きました。

そうしたら「2,3本位で治る」とのこと。
理由を聞くと特にない。その理由も根拠もない!?

話が長くなりましたが、これですよ。
医者の話で不安になるのは。

さっきの月経が遅れてしまった人や排卵がなさそうな人が医者に聞いているのは、今後の見通しとその見通しの「根拠」です。

現在の状態を「今はこうです」って検査データで説明されたって、そんなのは素人の人には、わからないのです。

それよりも患者さんが聞きたいのは、「今後の見通しと根拠」
今、現在の検査上のデータなんて、ただの機械などがはじき出した数字などであって、それが今後の患者さんの不安を和らげるものではありません。

患者さんは検査して、もらいに行ってるのではなく高度な専門知識と豊富な経験を持った専門家の見識、見解を聞いて、今後の治療をどうしていくのか?を検討したいのです。

なのに、説明するのは今の検査上のことだけ。
今のことはあなたに言われなくてもわかるのです。

だけど、見通しは言わないけど、ホルモン剤はきっちり処方します。
見通しと根拠、原因がわかっていないのに何の根拠で処方したの?
いくら医学が素人の患者さんでも不安になりますよね。

西洋医学は、個人差、体質差という概念自体がない医学なので、確かに基本から外れた個人差のある状況には弱いと思います。
ガイドライン、平均が命ですから。

でも、病院に来るのは普段の状態から外れて体調がおかしくなるからなのです。
そして、年齢も生活環境もバラバラなので、生まれつきの体質差だけでなく、その時、その時の個人差があるのです。

それらの現時点の「データ」も加味して、対応していくのが医療だと僕は思うのですが、現状だけをただ朗読されてもね・・・。

それこそ、伝統的な漢方治療の方法は今後の見通しと結果の確認、再検証の繰り返し。
もちろん、見通しは治療方針なので、現実は外れることもあります。
その時は現状を確認して検証→再検討です。

漢方では最初から体質差は無数にあるという前提で治療しますので、人それぞれ、治療方針、見通しが変わります。

僕はかれこれ不妊治療を10年以上やっていますが、「不妊症の人には当帰芍薬散」みたいな幼稚なマニュアル思考ではなく、毎回、頭をまっさらな状態にして、「この人の体質はどんなだろう?」と見るようにしています。

決して、経験が長くなったからといって「不妊症」ではなく「その人」をみます。
患者さんは、良くなるように保証しろ!と言ってるのではありません。
専門家の今後の見通しと根拠を説明しないから、みんな怒ってるみたいなのです。