自分で漢方薬を選ぶ際の注意点

先日、来られていた患者さん、漢方にすごく興味があるみたいで、いろいろと話していたのですが「実はまごころ漢方さんに来る前に自分でネットで調べて漢方薬を飲もうと思った」という話になりました。

今はネットで漢方薬のことも調べることができるので、自分で漢方薬を選んで自分で購入するという方は結構、いらっしゃいます。めずらしくないですね。

「自分で選んだ漢方薬では良くならなかったのですか?」とお聞きしたら、自分で調べれば調べるほど、どの漢方薬に書いてある症状もあてはまる症状もあるし、あてはまらない症状もある。というカオスな状況に陥ったようです。

全部の症状がピタッとあてはまる「コレッ!」という漢方薬がないので、結局、どれが合っているのかわからなくなって、うちに来られたようです。

そもそも、自分で選ぶ方法は、いろいろと間違いがあります。
1つは「漢方薬は自分が思い当たる症状をあてはめていって選ぶものではない」ということ。
それに「ネットの情報が治療のために漢方薬を選ぶ情報として成立していない」という2重の間違いがあります。

このあたりのことは、また後日に詳しく書きたいと思うですが、それよりも不妊治療の場合はもっと問題です。

アトピーとか耳鳴りを治療するために自分で漢方薬を選んで飲むというのは、いろいろ間違いはありますが、自分で選んでも漢方薬自体は悪いものではないので、選んだものがラッキーで当たっていれば、治ってくるかもしれません。
(ただし、漢方薬をどれくらいの期間、飲めば効いてくるか?とう問題はあります。漢方薬が1ヶ月分で売ってたとしても治療期間とは関係ないですから。)

これが不妊治療になると問題になってきます。
不妊治療は便宜上、不妊治療とよんでいますが、病気でもないし治療でもないのです。

月経不順や冷え性のための簡単な感じで説明してある漢方薬はありますが、果たしてこれで順番に治っていくのでしょうか?

自分で選んだ漢方薬で「冷え性はよくなった気がするが、基礎体温の形がおかしくなった」とか「経血は増えたけど胃痛が起こるようになった」とか。

あらゆる症状全部が一変に自分の思っている通り、都合よく良くなればいいですが、漢方専門治療をしている立場から言わせて貰えばそんなことはあり得ません。

そして、これにはまだ続きがあります。

気になっていた症状がなくなる=妊娠する。
ではないのです。

体調が良くなることは確かに妊娠を成功させることに必要なことですが、不妊症は病気ではないので、症状がなくなった→めでたし、めでたし。とはならないのです。

最終目標は体調がよくなった先です。
ホルモンバランスなどが妊娠に向かっているのか、方向性をみていかなければいけません。

それに服用期間の問題もあります。
最初の1ヶ月でいきなり、全部の症状が良くなることはありません。
中には1ヶ月間は全く変化がない場合もあります。

そんな場合は、どうします?
延々、自分が思うような効果が出るまで続けますか?
ちなみに不妊症で使用する漢方薬は体質別に何種類もありますよ。

自分が気にいったから、その漢方薬が合っているとは限りません。

うちでは、1ヶ月か2週間ごとに体調が良くなっていても、悪くなっていても、変化が何もなくても漢方薬の変更を再検討します。
中には2週間ごとに漢方薬を変更し2ヶ月目で妊娠した方もいらっしゃいます。

漢方薬は症状をあてはめて考えるのではなく東洋医学的体質を診断し一定期間の服用後も常にその漢方薬が合っているかどうかを再検討していかなくちゃいけない医学なのですね。

この問題は実はもっと大きな問題を孕んでいます。
自分で漢方薬を選んで飲んでいる人は、どこか、ちゃんと東洋医学的診断をしたほうがいいんだろうなと、どこかで思っていると思います。

シャレにならないのは病院で処方している漢方薬。
ほとんどの病院は東洋医学的な体質判断せずに不妊症という病名や冷えや貧血などの2、3の症状だけをあてはめて処方しています。

要するに自分で漢方薬を選んでいる素人の人とやってることは、ほとんど変わらないのです。
なのに病院で処方しているイメージでちゃんと処方してくれているという誤解を生んでいます。

うちでも140項目くらいの体の状態をお聞きして相談していますので、1人につき1時間くらいかかります。
時間が問題ではないですが、一人の体質を知ろうと思ったらそれ相応の時間はかかります。

断言できますが、漢方薬を選ぶためだけの問診をとらずに漢方薬を処方している病院は、素人とほとんど変わらない処方だと思っていたほうがいいですよ。
それだったら、自分で選んだって大した違いはありません。結局、どちらもラッキーにすがる漢方治療です。