漢方には治療の考えの違いによる流派が存在する

漢方には治療の考え方によって異なった流派があります。

西洋医学に流派はありません。
治療方法に若干の違いはありますが、検査も使用するホルモン剤もどこも似た様な使い方をしています。

一般的には間違った考えの漢方が常識になっています。
病院でやってるような西洋医学の病名に合わせて漢方薬を処方したり、漢方薬局がやってるような症状だけを聞いてそれに漢方薬をあてはめていくようなアノ方法は、間違った常識です。

本来の東洋医学から見たら非常識。

漢方は「証」という体質を構成している要素を東洋医学的に分析します。
よって、西洋医学の病名などは参考にはなりますが、診断とは一切関係ありません。
また症状を1つずつあてはめていくものでもありません。
症状は「証」を導き出すための情報の1つにしかすぎません。
自覚症状や生活環境や生活リズムなどを総合的に判断して「証」を導き出し、更にそのいくつかの「証」の組み合わせから東洋医学的な体質を判断し、東洋医学的体質に対して最適な漢方薬を選びます。

漢方の診断から漢方薬を選ぶまでの基礎はこんな感じなのですが流派によって「証」の考え方や治療薬に使う漢方薬の選び方が変わります。

ちなみにさっきの病名だけで処方している病院や症状だけあてはめて処方している漢方薬局などはヘタすると漢方に流派があることすら知りません。今度、聞いてみてください。「先生は何派ですか?」って。

代表的な流派は3つあります。

古方派、日本漢方派、中医学ですね。
中医学は流派と呼べるのか微妙なところです。

古方派とは原典的な漢方の治療方法を重んじる流派です。
2千年前の漢方の原点となる方法や考えで治療します。

漢方の原点は腸チフスなどの強烈な流行り病を治療することだったので、治療は攻撃的な傾向があります。
身体の陰陽の動きを捉えていく方法で診断することが多いので少し観念的な感じがあります。

日本漢方は日本歴史の中でもっとも長く使われてきている流派です。
中国のややきつめの考えの古方などを日本の風土や日本人に合うよう日本風にアレンジした漢方ですね。

中医学は流派というか、別名学校漢方とも言われています。
古方は2千年。日本漢方は500年。そして中医学は60年前につくられています。
それまで中国には様々な流派があったのですが、それらを統一して学校で誰でも習えるようにした漢方です。

当時は中西合体という考えがあり、西洋医学との融合を目指していましたので、中医学は西洋医学っぽいところがあります。

身体を細く部品みたいに分けて、細く証を分析し漢方薬に対する発想も、どの生薬や漢方薬が身体にどんな効果があるのか?みたいな西洋医学の感じがあります。

なので中医学の流派の人は、生薬をいろいろ組み合わせたり、やたらたくさんの種類の漢方薬を処方したりします。

ちなみに現状で日本で漢方をやってる大半の人間は、自分が何の流派の漢方をやっているのかすら知らないと思いますが、知らないなりにやってる流派は中医学の理論で日本漢方の漢方薬を使うというムチャクチャな流派です。

ま、こんな書き方ですから、僕は中医学派ではありません。
西洋医学とは違うところに漢方の良さがあると思うのですが、それを西洋医学に近づけてやろうとしている中医学の感じが僕には合いません。

ただ、西洋医学の思考っぽいので割合単純な発想でとりかかれるという、とっつきやすさはあると思います。

「この症状に、この生薬が効いて」といった感じで西洋医学のように誰でも考えやすい感じはさすが、学校漢方です。

こういうことを書くと中医学を知らないクセにと言われそうなので、一応言っておきますと中医学の資格のようなものである「国際中医師」というものを僕は持っています。
なので、中医学を知らないで話しているのではないとお断りしておきます。

ところで、皆さんが知っていそうなところで中医学ってどれなの?とお思いになられるかもしれません。

漢方薬局の前にパンダのマークの看板があるじゃないですか。
あれは中医学の傾向が強いです。

婦宝当帰膠などですよね。
あのメーカーを扱っている漢方のお店は、あらかじめマニュアル的に決まった処方を使うことが好きな先生が多いです。
それにいろいろな種類の漢方薬を処方するのも。

不妊症なんか、みんな勉強会で聞きかじったマニュアル処方で大体、誰にでも同じ処方構成を処方するみたいですよ。
(僕自身、昔、薬局を相手に仕事をしていましたし、それ系の薬局に行っておられた患者さんから聞いた話を元に話してます)

まーそれがいいか悪いかは別として漢方は西洋医学と違って、治療に対する考え方の違いで流派があるのですね。

ちなみに僕は国際中医師を持っていますが、中医学は好きじゃないです。
僕は古法派をベースにした日本漢方派です。