漢方治療の腕に必要なのは理論よりも経験と直感

結構、年齢の高い方が妊娠されました。
うちでは新記録になります。

漢方相談を始めた当初は、たまに40歳の方でも「新記録だ!」と自分の中で喜んでいたけど、最近、40歳で体外受精の失敗経験があって、その後、うちで妊娠なんてめずらしくなくなった。

そして、漢方相談を続けているうちに、年々、成功年齢は上がっています。
今回の方は当然だけど、40歳以上です。
この記事では、よく他のWebサイトでやってるような「あきらめないで!年齢が高い人でも妊娠OKですよ!」みたいな3流の客寄せ治療例を書きたいわけじゃないので、年齢は伏せときます。

実は「年齢が高い人でも漢方薬なら妊娠ができる」ということが趣旨ではありません。

実は、その方の初めての体質判断表と基礎体温を見た時に「この人は妊娠早いな」と思いました。

相談の様子を見ていた嫁さんにも、患者さんには占いじゃないからこんなこと言わないけど「あの方の妊娠はおそらく早いよ」と話していました。

ちなみにこれは年齢は関係ありません。
今までの病気の傾向とか、体質とか、たくさんの人の不妊症の相談をしてきたので、それらの気づいた条件と自分の経験上の勘を合わせれば、なんとなくわかります。

漢方治療は当たりハズレじゃないから、これからうちに相談に来られて、「私って妊娠が早い体質ですか?」って聞かれてもお答えできませんけれど。

あくまで、自分の未来の見立ての能力を高めていく自己満足みたいなものです。

そして、こういった体質の方ってある漢方薬が効果的です。
この漢方薬っていうのは、共通しています。

漢方は処方する先生が分析した体質に対して合わせます。
普通で考えている発想と逆なんですね。

西洋医学的な発想だと、当帰芍薬散がホルモン活性にいいからとか、意味不明な良いデータ?があるからなど、この薬のこんな風にいいから「不妊症」なら飲みなさい。となりますが、漢方は患者さんの体質を分析し、体質の結果が出てから、その体質に対して漢方薬を合わせます。

もっと詳しく言うと体質を細かく分析している時点で、その体質に合う漢方薬って決まっているのですね。
血虚、脾虚、瘀血の3条件の体質の方には●●漢方薬など。

体質分析結果=漢方薬です。
このブログで漢方は「不妊症」とか「冷え性」などの病名や症状に●●効果があるからといって漢方薬は処方しないといってるのはこういうわけです。

妊娠しやすいある漢方薬があるということは、イコール妊娠しやすい体質があるということです。

そして、この体質は、おそらく生まれつきの体質です。

初回の時にそんな感じに思ったのですが、症状や状態、状況などを詳しく聞いていくと、どうももう一つの種類の処方も合っているかもしれないと思い始めました。

マニュアルで不妊症 → 当帰芍薬散とか温経湯とか、それこそ漢方メーカーから貰った漢方的には意味不明な臨床データ?で事前に処方が決まっていたら、こんな感覚ないと思いますが、漢方って体質的に考えたら、どの種類のものも候補として上がってくるので、漢方相談を本格的にやっているとよくこういったことがあります。

初回に直感的に思ったAという漢方薬。
詳しく聞いていくうちに理論的に導き出したBという漢方薬。

僕はどちらかというと西洋医学も化学も薬理も大好きな理論派なので、誘惑に負けて理論的に導き出した処方を選択しました。

1ヶ月後の結果は、身体全体の改善は、そこそこ良くなった感じ。
そしてこの1ヶ月後は、次こそと最初に直感も含めて合っているんじゃないかと思った漢方薬を処方。

その後、いろいろな症状や状態などの結果は、その前の漢方薬の方がよかったかもしれない感じ。

しかし、ここは漢方らしく直感でいきました。
うちでは、症状などがどんどん良くなっていかなければ、ドンドン漢方薬は変えていきます。

しかし、この処方は変えませんでした。
相談をしていて理論的に考えると前の処方に戻したい衝動にかられましたが、患者さんが話している内容だけでなく、受ける印象や話し方、声のトーンなど理論でない部分が、このままでいったほうがいいと囁いていました。

そして結果、妊娠。

今回みたいなケースは実はよくあります。
漢方って経験医学なので、理論だけで通じないところが多々あるのですね。
だから、僕自身、理論派ではありますが、漢方は経験からの直感が重要なのだと思い知った経験でした。