ホルモン剤は月経周期を28日に調整するものではない。

非常に奇妙な話しを聞きました。
月経周期35日の人が初めて不妊治療の病院に言ったら排卵誘発剤を処方されたらしいのですが、その時に医者から「月経周期が35日と長いようだから、28日になるようにお薬を出しときますね」と説明されたらしいです。

僕もこの話しを聞いて「???」となりました。
「排卵誘発剤で35日の月経周期を28日に・・・」
その方は病院に初めて行ったばかりで、どの薬がどんな作用なんか当然、わかりません。

そして、不妊症で悩んでいる人の中には最終的に不妊治療の病院にいけば「なんとかなるかも」と考えている人もいると思うので、医者にそう説明されたら「そうなんだ」と素直に飲んでしまうでしょう。

でも、ちょっと待って!排卵誘発剤で35日周期の月経を28日周期にするというのはちょっと乱暴すぎる説明だと思います。

月経周期は3つのステージに別れます。
初めは月経期ですね。そして月経期の次の排卵期、最後に高温層の黄体期です。
これらの3つのステージでは、それぞれのステージでホルモンのバランスが変わりながら、月経や排卵、黄体期などをつくりだします。

月経周期28日は平均というか理想であって当然、絶対的に28日でないと病気というわけではありません。
あくまで基準的には28日周期であるということですね。

人間の体はデジタルの機械ではないので、個人差で短い周期の人や長い周期の人がいます。
それらの周期はさっきの3つのステージとそれに対応したホルモンバランスで成り立っているので、絶対にこれが原因というもの分からないのです。

おそらく、ほとんどの人は、3つのステージ全てで微妙にバランスが崩れていたりすると考えるのが妥当でしょう。
また、きっちりと28日周期で来る人が、ちょっとしたストレスなどで、ひと月まるまる月経が飛ぶなんてことは、めずらしくないので、月経周期のズレなんてホルモンの問題だけでは語れないのです。

それが、35日周期を28日周期にするために排卵誘発剤を使う?
周期のブレに関しては無限にいろいろな問題が考えられるのに排卵誘発剤で周期を28日するというのは、最早ウソの説明レベルだと思います。

排卵誘発剤は、排卵を誘発するホルモンを促すものですが、その効果を発揮する薬理過程でエストロゲンの働きを排卵期において邪魔します。
だから、排卵誘発剤を使うと子宮内膜が薄くなります。

排卵期の次が黄体期で、黄体期では子宮内膜がどんどん厚くなっていくステージです。
その時にホルモン剤という自分の体の働きと関係ない外部の働きで子宮内膜が薄くなっているのです。

月経周期というのはいろいろなホルモンの絶妙なバランスで成り立っています。
西洋医学ではそのホルモンを単純に強めたり足したりしていますが、機械じゃないんだから、そんな単純な方法だけで月経周期全体が整うほど簡単なものではないのです。

さっき説明したように普段の精神や体全体の状態も関わっているのです。
それをなんかの薬を足したらなんとかなるって、ちょっと体の働きをナメ過ぎではないでしょうか。

これで月経周期が整うのなら、3つのステージそれぞれのホルモン剤を飲めば、誰でも28日周期になるということですよね。

患者さんには医学的知識がない。ということで、それをわかりやすく簡単に説明したつもりかもしれません。
しかし、西洋医学は薬の薬効が細かく設定されています。

排卵誘発剤の働きは排卵を誘発する方向にもっていくことと、子宮内膜を薄くする方向にもっていくことです。
それ以上でもそれ以下でもなく月経周期全体を整えるものではありません。

僕自身はホルモンバランスは外部から薬でチャチャを入れれば、入れるほど、おかしくなっていくと考えているので、全体を整えるために排卵期だけ薬を飲んだら全体が整うなんてことは、あり得ないと思います。(病院もホルモン剤を使い続けていたら「次の月は体を休めましょう」とか言ってるから体に余計な負担をかけているとは思っているようだけど)

こういった説明の何がダメかって、患者さんは35日周期が28日周期になる!と思って飲むわけですよ。
それを軽はずみに西洋医学的な臨床的根拠なく過大解釈して「28日周期になる」なんて説明したら、それを飲み続けて28日周期にならなかったら、また悩むことになります。

みんな病院では質問しづらいと言っておられますので、排卵誘発剤を飲んでいても、なぜ自分は28日周期にならないのか、質問もできずに1人で悶々と悩まないといけないのです。
その方もそれで悩んでおられました。

病院側はどうせ、お通しみたいに排卵誘発剤を出しただけだから、周期が整わなかったら後づけでHCGやらHMGやらエストラーナやら、薬や注射を足してけばいいでしょうが、患者さんにしてみれば、いろいろと薬を付け足されていけば、ますます悩みの種が増えていきます。

排卵誘発剤だけで35日周期が28日周期になるって言ってたのにいろいろ付け足さないといけないということは、私の体は当初よりもそうとう悪いのだ」と。

だから、ここは正確に「35日周期の原因はわからないけれど、排卵誘発剤自体の働きは排卵誘発することと、内膜を薄くすることのみだけど、それで排卵や周期全体がどうなるか様子をみていきましょう」と説明するべきです。
この感じの説明だと別に医学の専門知識がなくても説明OKじゃないですか。
ここで排卵誘発剤はエストロゲンとの拮抗作用によりFSHの活性を促し・・・みたいな専門的な説明は必要ないでしょ。

今回のケースは検査などの状況から判断しても35日周期の問題が排卵誘発剤で解決するという臨床的根拠なんて持ってなかったと思います。

それに漢方の自然治療の経験上、月経周期は28日に無理矢理に合わせる必要はありません。
うちでは、なぜか、26日周期などのちょっと早い周期の人のほうが自然妊娠率が高いです。

また、年齢が高くなると月経周期が短くなる傾向があるようです。
28日周期というのはあくまで平均で理想です。
そして、得てして現実は平均と理想があてはまりません。

不妊治療は月経周期を28日に無理矢理、合わせるのではなく、その人のベストな周期を探してあげることではないかと僕は考えています。

それに、絶妙なバランスで成り立っているホルモンバランスを偽物のホルモンである人工のホルモン剤でなんとかしようと思うのが、おこがましいと思います。

あなたがロボットでなければ、月経周期を整えようと思ったら、ホルモンの問題だけでなく、体の不調や精神状態、普段の生活習慣など全体を見つめ直す必要もあるかもしれませんよ。