クロミッドについて(不妊治療の医学知識)
今回は長いですよ。長いけど「ホルモン剤って本当はどうなの?」と、ちょっとでも不安がよぎった人は最後まで読んでみてください。
今回は、病院のホルモン治療で初めに処方することが多い、クロミッドについてです。
お薬の説明前に前に排卵までの身体のメカニズムについて考えてみましょう。
(1)元々、女性は原始卵胞というものを持っています。
ただ、このままの状態では受精卵としては未熟です。
月経の少し手前から視床下部から卵包刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌され、卵巣からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されます。
【まとめ】
視床下部から → FSHとLHの分泌される。初めはFSHのほうが主役。
卵胞から → E1・E2・E3などのエストロゲンが卵胞から分泌される。
※FSHの働きが主体となって卵胞が大きく育っていく。
(2) 卵胞が大きくなるにつれ卵胞ホルモンの分泌量も増していきます。
【まとめ】
卵胞が大きくなる → 卵胞ホルモンの増加
(3) 卵胞ホルモンは2つの働きをします。
1つは着床の準備のために子宮内膜を厚くします。
もう一つは精子が無事卵子に出会えるように子宮頸管を刺激し頸管粘液の分泌を促します。
【まとめ】
卵胞ホルモンの分泌増加 → ①子宮内膜を厚くする。 ②頸管粘液の分泌を増加させる。
(4) 血液中の卵胞ホルモン濃度がピークに達すると2つの働きが起こります。
1つはLHを刺激してLHを一気に大量放出させます。
もうひとつは頸管粘液の分泌を更に増加させます。それによって、粘液の一部が膣へ流れこみます。精子を迎え入れる準備ですね。
【まとめ】
卵胞ホルモンが → ①LHの大量分泌を促します。 ②頸管粘液の分泌を増加させます。
(5)卵胞が20mmくらいになったら、排卵します。
卵胞ホルモンの刺激によるLHの分泌増加が始まってから約36~38時間後に排卵が起こります。
LHホルモンの増加のピークから計算すると15時間〜24時間以内に排卵が起こります。
【まとめ】
LHホルモンの分泌が高まる → 排卵が起こる。
★この時に西洋医学では平面的に捉えて勘違いすることがあるのですが、FSH、LH、E1などのエストロゲン、3つのホルモンがあればいいということではありません。
初めにFSHの分泌が高まって、次にエストロゲンの分泌が高まって、その後にLHの分泌が高まるのです。この分泌の順番や連携、分泌量が高まる度合いは非常に重要です。絶妙なタイミングとバランスで成り立っています。
いや〜ややこしいですね。
これが排卵までの自然のホルモンの動きです。
ではでは、排卵誘発剤について考えましょう。
クロミッド、セキソビット、セロフェン、どれも排卵誘発剤と呼ばれているものです。
効果の強弱はありますが、どれも作用のメカニズムは同じです。
これらの薬には副作用があります。
それは子宮内膜が厚くならないことと、子宮頸管粘液が少なくなる事。
簡単に言えば、排卵誘発剤を使うと「赤ちゃんを迎え入れる準備はできなくなる」ということですね。
普通の痛み止めなんかの副作用だったら、副作用に吐き気なんか書いてあったってそれほど気にする必要はありません。
ところが、ホルモン剤にある副作用はとっても重要です。副作用で更に不妊になるかもしれませんから。
それを今から説明します。
視床下部はエストロゲンの血液中の濃度をみています。
クロミッドなどは視床下部がモニターしているエストロゲンを感じ取る部分を鈍らせます。
エストロゲンが少なくなったと「勘違いした」視床下部はこんどは逆にエストロゲンを増やそうとFSHを刺激するのです。視床下部、健気ですね。
だまされているとも知らずに。
そして、その結果、卵胞が育つという働きです。
クロミッドのエストロゲンの濃度を少ないと勘違いさせるのは、つまりエストロゲンの働きを邪魔しているのです。
だから、エストロゲンが持ってる赤ちゃんを迎え入れるための効果(子宮内膜を厚くする。精子を迎え入れる頸管粘液を増やす)が悪くなるのです。
なんて皮肉でしょう。
排卵させるために受胎と着床がしずらくなる。
排卵のためなら手段を選びません。例え、受精卵が着床しなくても。
クロミッドでは、本来20mm当たりで排卵するはずなのに30mm近くなっても排卵しないことがめずらしくありません。
また、短期間で極端に卵胞が腫れることもあります。
なぜ、大きくなっているのに排卵しないのか?
はい、そこでさっきの上の「★」の部分の文に書いてあることが重要になってきます。
ホルモンの分泌には順序やバランスがあるのです。
要するにクロミッドなどはその順序や分泌量などのバランスをむちゃくちゃにしています。
○ FSH分泌 → エストロゲン分泌 → LH分泌 っていう順番を
● エストロゲンを少ないように勘違いさせる(実際は少なくないかも) → FSHが勘違いしてがんばる → 卵胞育つ(大きくはなるけど) → エストロゲンの分泌 → LH分泌 → 排卵???
こんな風にホルモンが、うまく連携していかないから排卵しないことがあるのですね。
ここから更にひどくなることがあります。
クロミッドで排卵しなかったらHCGって注射を使って排卵させます。
もちろん、自然リズムではそんな注射は関係ありません。
これで、またむちゃくちゃ。
(なんだろう、初めにウソついたら、後もどんどんウソつかないと辻褄合わないみたいな)
個人的な考えですが、医学的に考えてクロミッドを使う際には、絶対に調べないといけないことがあると思います。
◎1つは本当に排卵していないのか?
最近の病院の傾向をみていますと、ろくに検査もしないで、25歳以下の人でも初回で簡単にクロミッドを処方しています。
(ホルモンバランス崩してやろうと考えているのだろうか・・・こりゃ、調べてないな)
◎2つ目は、エストロゲンのバランスを強制的に変えても本当に問題ないのか?
これも調べてないですね。どうやったら調べられるのかわかりませんが。
検査で調べたって、かなりの極端な数字でない限り、それが本当に悪いのかどうかわかりませんから。
本来の自然のバランスを崩して排卵させる。その結果、受胎と着床の邪魔をする。
「まー排卵はしたからいいんじゃない」みたいな感じだろうか?
これって治療?病院のこっち良くしたらあっち悪くなるっていうのいい加減、やめてほしいです。
(あっでも病院の薬の効果は大体フィードバックを利用するからそれをやめるのは無理ですね)
ちなみに漢方はホルモンを強制的に操作することを考えるのではなく、ざっくりと言うと冷えや疲れなど、健康でない部分をフォローし排卵を促しますよ。
排卵に導くためにする調整は体質ごとに変わりますが。
後、クロミッドなどの排卵誘発剤は、6ヶ月以上は使用しないようにというルールがあります(西洋医学的に)
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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉
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Twitter:henjaku
2013年9月20日 7:12 PM | カテゴリー:病院の不妊治療について