「薬を使わない不妊治療=良い治療」ではない

最近、何件か同じような質問があり、誤解を与えているかもしれないと思い、
過去記事の補足を兼ねて説明しようと思います。

えーっと、いつの記事かというと去年の10月19日の

よい不妊治療の病院の選び方

どうも、ホルモン剤やAIH(人工授精)やIVF(体外受精)をガンガンやってきた人は、
化学療法でガンガンやってきたから、身体が疲れちゃった。
だから自然に治療しようかなっていう気持ちになるようです。

そこで、なるべく自然な治療ができる不妊治療の病院はないですか?と聞かれるのですが、
病院で治療する限り、自然なんてあり得ません。

ここで身体の状態を詳しく見ながら考えてみましょう。

ホルモン剤をガンガンやってると、だんだんと本来の自分の持っている月経リズムとずれてきます。

元々、妊娠しにくい身体だと診断されて、ホルモン治療を初めたと思うのですが
(ちゃんと一人ずつ診断しているのかは知りませんが・・・)クロミッドを何ヶ月か飲んでもうまくいかない。

じゃあ、HCGの追加で「どうだっ!」って感じになる。
それでも妊娠しないので、じゃあ、ルトラールとか、あなたの身体が状態がどうかより、

「なかなか妊娠しないから、ドンドン薬を増やしていく」といった、
ちょーマニュアル的に治療が進んでいっているのだと思います。

そうやっているうちに自分の本来持っている月経リズムとはかけはなれ、
薬によって作り出された月経リズムが出来上がります。

ひどい場合は、以前の月経予定日の3日前位から不正出血が当たり前みたいな、
ホルモン性月経不順(勝手に命名)の出来上がりっ!です。

そうなると、明らかに身体がホルモン剤にやられています。

だったら、お薬をあまり使わない治療が自然に近くていいじゃないかとなるわけです。
人間の思考の自然な流れですね。

でも、ここで誤解しちゃいけないのは、
ホルモン剤の種類は少ない方が身体の負担は少ないですが「薬が少ない=自然=良い治療」ではないです。

うちは、不妊治療の病院で高度治療を何回もやってもダメだったと言う方が大勢来ておられるので、
その経験から見ると、ホルモン剤の合わない人は、1種類でもダメです。

ホルモン剤1種類、飲んだだけで、即、全身蕁麻疹や高熱、強い吐き気なんてたくさんいらっしゃいます。

病院では「ホルモン剤なんて、滅多に副作用がないですよ」って言ってますが、
それは、現時点で通院している方は、病院ヨリの考えで治療しているからで、
悪くなった人がどうしても少なくなるからです。

もしくは、通院をちゃんと続けたいので、実は体調サイアクだけど、
我慢しているという人も結構います。

対して、うちは、どちらかというと病院でダメだったという側の人が多いので、
病院の不妊治療の裏側が見えるのです。

そういった患者さんをみていくと、ホルモン剤はバカバカ飲まなくたって、
1種類でもダメな時はひどいことになるんだなと思いました。

ホルモン剤の最大の弱点は、どんな効果かはわかっていますが、
【どんな人には合わないのか】が全くわかりません。

「まれに副作用が出る人がいる」という非常に適当で曖昧な情報しかありません。

だから、ホルモン剤の数が減ったところで、自然治療ではないということ。

それと、それに関連しますが、ホルモン剤をなるべく使わないのは、
見方を変えれば、「もうちょっとホルモン剤を増やすか、注射とかできつくしないと妊娠しないかな」って、
悩んでいた「中途半端な時期に戻るだけ」ということ。

確かにホルモン剤をなるべく使わないことによって身体への負担は減りますが、
減らしたら妊娠率が上がるわけではありません。

極端にいえば「なかなか妊娠できないから病院に言った方がいいかな?」って、
悩んでいた時期に戻るだけということです。

なので、なるべくホルモン剤などを使わない病院の治療をするのであれば
「病院に行ったほうがいいかな」と悩んでいた時期とは違うことをして、
ホルモン剤が減った分を埋めることが必要です。

うちでやってる漢方は、自然妊娠を高めるための治療です。
うちでは、病院の併用は患者さんの考えにおかませしていますが、
僕自身は、特別な事情がない限り、全くの自然で妊娠できることを目標に治療します。

このケースで「なるべく薬を使わない病院の不妊治療」との併用はフォローされています。 

だから、漢方がいいですよって宣伝ではなく、こういった手段も1つとして、
漢方でも、なんでもいいので、自然妊娠力を高める何かをしないと、
「なるべく薬を使わない自然な病院の治療」は、
ただ過去に巻き戻しているだけになりかねないということですね。

「化学合成のお薬で身体が疲れちゃった・・・だから、自然にかえれば良さそうじゃない!」
っていうイメージだけではなんともなりません。
元気な赤ちゃんを授かることをリアルにイメージして冷静に考えましょう。

ちなみに僕は病院の治療は全否定ではないです。
ホルモン剤は作用が強く、機能刺激系のものだと考えているので、
その役割をうまく使えばとっても強い味方になると思います。

ただ、現実は、一人一人の体質や状況を考えずにマニュアル的に作業的な治療になりがちなことや
どんな体質だったら合わないのかがわからないこと。
が問題になってくるのではないでしょうか。