不妊治療の現実を知るために不妊病院の歴史を知る

気づいたら、かれこれ不妊治療は修行時代から含めると10年を超えています。
修行時代に師匠から、漢方薬や東洋医学の知識を使っての不妊治療教えていただき(病院は単純に当帰芍薬散か温経湯を出しとけばいいと考えているみたいですが・・・)、思えば、修行を終えて自分の最初の患者さんは自分たちでした。

漢方、東洋医学の知識をもって自分達を治療(実験台?)にして、子供を授かり、その時のノウハウも合わせて、今は実体験をもった漢方医として不妊症相談をさせてもらっています。

不妊治療の漢方相談を始めた当初は、体外受精なんてめずらしく、大体の人はホルモン治療、人工授精がダラダラと長く続いている感じでした。
「人工授精が5回目なんです」みたいな話をよくしていました。

僕ら自身が不妊治療の病院に行った頃(2度目で喧嘩してリタイア)は、検査ばやりな感じで、クラミジアがあるか?子宮内膜症があるか?卵巣が腫れているか?みたいなところにスポットが当たっていて、検査するのが好きな不妊治療の病院が多かったです。

それから、お店をやり始めた8年前頃は、とにかくセキソビット、クロミッドで排卵させれば、なんとかなるとでも思っているような治療。
これは今もそんな病院が多いかもしれませんが、その人が排卵しているかどうかなんて確認もしません。
とにかく、セキソビットとクロミッドは居酒屋のお通しのように出していました。

お店をやり始めて1年位経った頃は、大阪の某有名不妊病院が「血糖値が高いと妊娠しない」と言い出して、グリコランなどの糖尿病の人が飲む薬をやたら処方するようになっていました。

この頃から、うちに「体外受精を3度ほどしたけど、全然、かすりもしなかった」的な人が増えてきた感じです。

その後は、漢方もどき薬局と言えばいいのでしょうか、漢方相談と掲げていて、相談したら、松寿仙とかサメミロン、バランスターZなどのサプリや漢方薬もどきのサプリを売ってるだけで実は漢方相談なんか1mmもしてないみたいな薬局がタンポポ茶が不妊症にいいと使い始めました。

実はうちもその時は、あくまで補助としてですが、タンポポ茶を使いました。
ただ、うちでは何ヶ月か不妊症の方の臨床をみていて、皮肉なことにタンポポ茶を補助として処方した人よりも、漢方薬のみの人の方が妊娠率が高く、タンポポ茶はイマイチよくわからなかったので、うちはスッパリやめました。
漢方薬を選ぶ際の診断や漢方薬の効果というのは、2千年前からある、あらゆる書物。言わば純粋に治療だけを目的とした情報が根拠となりますが、やはり、お金を稼ぐことが目的のサプリ会社の私的データや説明は、なんのアテにもならないと今は扱ったことを反省しています。

一方、病院は、その後に体外受精では、やたらHMG、HCG、マーベロンなどを使うようになっていました。

この頃から、どうも病院には治療に流行りすたりがあるようだと気づきました。
それも、どうも白い巨塔のようになっていて、大阪の某有名不妊治療病院が何か新しい治療をやりだすと、それにつられて、下っ端なのかどうか知りませんが、下っ端っぽい病院が真似してやりだすといった感じ。

その後は、AMHという検査が流行り、卵巣の老化がどうとかこうとかで病院では「卵巣年齢が高いから妊娠しにくいよ」と連発していました。
その後、この検査の結果が「若くてAMHが低い人が妊娠したり」、「逆に年齢が高くてAMHが高いけど妊娠しなかったり」とグダグダな状態のデータが出てきたりして、今はよく知りませんが、このグダグダは、はっきりと決着はついていないと思います。
当時は「医者にAMHが悪いので妊娠できないと言われました」という方が多かったですが、うちでは「AMHなんて割とどうでもよい」と答えてました。

その後はどっちが先だったか、忘れましたがDHEAというアムウェイなんかにありがちな医療の素人が勧めてそうなホルモン系のサプリメントを医者が勧めていて、医者の頭は大丈夫か!?と思いました。

ただ、このサプリ、良い効果は知りませんが、女性で腕毛やヒゲが生えたりと結構な効果はあった感じです。

その後は、甲状腺障害があると妊娠しにくいという「妊娠したら代謝系ホルモンが減少する」という結果を逆説的にこじつけたような治療を始めました。
これは裏で結託した別の病院でチラージンという甲状腺系の薬を処方するというツワモノの不妊病院も出てきました。
まるで非合法系のドラッグをさばいているように見えましたね。

これもブームのように過ぎ去って、今はどの病院もやっているという感じではなくなりました。

その後は、ホルモン剤や鎮痛剤やビタミン剤をいろいろと組み合わせて7,8種類も飲ませる不妊病院なんかも出てきて、僕なんかは「とうとう医者もヤケクソになったのかな?」と思ったものです。

その後からは、不妊症自体が社会現象的になり、妊活なんて言葉も出てきて、不妊治療の病院がタケノコのように増えていって治療経験もノウハウもなさそうな薬局や鍼灸院も不妊治療に参戦し、カオス状態になりました。

ちょっと前は、1周回って周回遅れで「ホルモン剤を使わない自然治療」みたいなのをウリにするようになってきて、最近は、今までのやり方が、ごちゃまぜになっている状態で、ホルモン剤をガン!ガン!使うところ、自然をウリにするところなど、個々でされているようです。
流行りすたりの治療は最近はあまり聞かなくなりました。

ただ、医者に共通するのは、西洋医学の治療は日進月歩進化(流行り廃り?)しているのに、漢方薬だけは、相変わらず、10年経っても体質も分析しないで当帰芍薬散か温経湯か、ちょっと、どこかのセミナーで聞きかじった医者だと桂枝茯苓丸か加味逍遙散程度で、それもただ、マニュアルで処方するだけ。言い方を変えれば販売しているだけみたいな。

このように漢方薬を専門的な医療としては、この10年間、全く勉強する気のないところは変わっていないので、漢方に対してはある意味、すごいなと感心します。

ちなみに病院の不妊治療の流行り廃りは、患者さんから聞いた話や僕の感覚的なものなので、あしからず!