薬膳は実は高度な治療

不妊治療で来られている方から、最近、よくこんな質問があります。

「漢方薬の治療だけでなく薬膳料理もやったほうがいいですか?」

もちろん、日々の食事は自分の体を作っていくものなので、漢方薬の薬だけに頼るのだけでなく、食養生もやったほうがいいです。

しかし、薬膳までは必要ないです。
薬膳まで必要ないというよりも、そもそも薬膳というもの自体が誤解されているようです。

最近、昔のアロマのようなノリで薬膳料理を教えてくれるセミナーなどがありますね。
みんな、薬膳料理をするために、そういうセミナーに参加することを考えているようですが、僕の答えは「必要ない」です。

薬膳が悪いというわけではありません。

漢方と一緒で巷の薬膳もほとんどが偽物だからです。

一般的的に薬膳というと「少し生薬を入れたりする体にいい料理をつくればいい」と思われているようですが、薬膳は実は、かなり高度な治療です。

僕は漢方薬で病院で見放された難病も治療しますが、実は薬膳は漢方治療よりもランクが上です。

その昔、漢方の本場である中国で医者のランクというものがありました。

もっとも、高い位は「食医」です。これは食べ物で体を治す医者です。
これには薬膳料理も含まれます。

2番目が漢方医です。僕がやってるやつ。

3番目は外科医です。今の病院のような感じですね。

4番目が獣医です。

東洋医学の世界では、薬膳をつくる医者は最高ランクなのです。

だから、薬膳ができるということは、僕がやっているような難病の治療も漢方薬で、できるということです。

うちの患者さんに巷の薬膳セミナーなどに参加された様子を聞いていると、大体が、五行論という中国の理論を話して、後は、少し生薬や変わった野菜を入れた料理やひどいのになると野菜中心のヘルシー料理なんかを薬膳っていってたりします。

どちらにしても、どこも「体に良さそうな料理をつくる」ことを薬膳とよび、そこに中国の自然理論である五行論のさわりを摩訶不思議に説明して、薬膳セミナーとよんでいるみたいです。

漢方治療は、その人の証(病的体質要素)をみて、その証を整えることのできる漢方薬を選びます。

当帰芍薬散はホルモンを活性化する。とか補中益気湯は精子を増す。なんて西洋医学の薬のような直接的な効果なんて、漢方医学には、ありません。

あれは東洋医学的な体質を見れない人の簡易的なレベルの低い漢方薬の選び方で、基本的には診断の方法も漢方薬を選ぶ方法も間違っています。

そして、薬膳も同じで、生薬をいれたり、野菜の多い料理をつくるのではなく、第一にまず、やることは、その人の体質を見ることです。

それも不妊症とか、アトピーとか、西洋医学の病名を診断するのではなく、その人、個人の東洋医学的体質です。

漢方でも薬膳でも「不妊症」に良い料理なんてありません。
薬膳は、その人の体質を調整する料理をつくるものです。

薬膳も体質の診断ができなければ、どんな方向性の料理をつくればいいのかがわからないのです。

ということは、薬膳料理を教えられる人は、手前味噌でしつこいですが、僕のように漢方薬で難病の治療もできるわけです。

それに、漢方薬の生薬も薬膳の食材もどちらにも共通しているものは、たくさんあります。

東洋医学では食材にも、性質(効果)があると考えます。
栄養学のタンパク質とか糖質といったものではなく、「気を下げる」とか「熱を発散させる」とか「肝の臓の気を養う」などの東洋医学的役割が割り当てられていて、漢方薬と同じように、その人の証(病的体質)を調和させる役割のものを選び調理します。

漢方薬や薬膳の世界では、「誰にでも良い効果のもの」というものは、存在しません。
体質に合わせて治療するというのは、簡単にいえば、「冷えている人」には「温める」ものを「余分な熱がこもっている人」には「冷やす」ものを合わせます。
これらを逆にして「冷えている人に冷えているもの」、「余分な熱のある人に温める」ものを合わせる?と毒となり副作用となります。

薬膳も漢方薬も体質と薬や料理が合っていないと、ただの毒。副作用になります。
それが「合わせて調和させる」ということなのです。

世間の薬膳セミナーのような、なんか体の良さそうなものや生薬をいれて料理するのは、「ちょっと変わった料理」であって、それは治療や健康のためにするものではなく、趣味のためにするものになりますので、治療や健康のために実践したいのであれば、体質を分析、診断するところから教えてくれる薬膳セミナーを探した方が良さそうです。