体外受精で卵の質が悪くないのに流れてしまう。

こんな質問が、うちに来られた患者さんから、よくあります。

「体外受精で卵の質が悪くなかったのに着床しないのはなぜでしょう?」という質問。

いいかげん、西洋医学も人間の身体をバラバラの機械の部品のように考えるのは、やめればいいのにと思います。

どう考えても、人間の身体は全てが、繋がっていますから。

「卵の質がよかったのに流れてしまう」

これは別に不思議な話でもなんでもないですね。
実にシンプルな答えで説明がつきます。

「なぜなら、卵の質だけで赤ちゃんまで育つわけではないから」

卵の質は、成功するための1つの条件にしかすぎません。
当然、卵1つで赤ちゃんになるわけではないので、精子の質や能力だってあるわけです。

例えば卵子の能力の高さなんて、どうやって知るのでしょうか?
卵子を実験室で、いろいろな負荷試験など与えたりすれば、わかるかもしれませんが、それしちゃうと、受精卵としては使えないですね。

多分、ざっくりと言ってしまえば、見た目で決めているのだと思うのですが、見た目と能力が、かならずしも一致しないと思います。

例えば、全くイチロー選手のことを知らない人が、イチロー選手をみて、「この人は野球のすごい人なんだ」ってわかるのでしょうか?

何よりも、精子なんて、通常の健康な人だって、ほぼ受胎できないで死んじゃうのです。
いいかえれば、質が良くたって、全滅するのが当たり前の世界。
人間の妊娠率を考えると自然妊娠はシビアな世界です。

質といって、モノみたいに見ることに合わせて、能力自体を測ることも大事なんじゃないかと思いまいます。

まず、質だけで元気に赤ちゃんに育っていくと考えていいのかどうかです。
また、能力も普通だったらいいという問題ではないでしょう。

大半の男性は運動能力も問題なくても、妊娠しないわけですから。
より強くですね。

次に妊娠は受胎すれば、それでOK!ではありません。

受精卵を育てるのは子宮内膜です。
内膜を常に厚い状態に保つために血の巡りと温度が必要です。

それらを命令するのは黄体ホルモンです。
こういう説明を聞くと、だからホルモン剤で活性化させれば良いと、短絡的に結果に結びつけて考えがちですが、そもそも、ホルモンは命令をするだけのモノです。

ホルモンが命令し内膜を厚くする「血」は、また別の問題。

「血はちゃんと巡っているのか?」とか「十分な血の量があるのか?」
なんてことも関わってきます。
これも病院は貧血じゃないから血が不足していないとか、すぐに人間の身体を機械のごとく考えますが、それは大きな勘違いだと思います。

漢方では血虚という考えがあって、思考や活動などと自分の持っている血の量の「バランス」が合っていなければ、血が不足していると考えます。

検査数値でなんか考えませんよ。
単純に採取した血液だけでは人間の身体は推し量れません。

貧血でなくとも、立ちくらみがあったり、頭がぼーとしたり、運動できなかったり、なんて人は、いくらでもいます。
むしろ、採取した血液と平均の数値だけで人間の身体が探れると思っているところに怖さを感じます。

また血をつくる原料は、胃腸などの消化器と食べ物です。
胃痛や胃もたれ、便の状態に問題はないでしょうか?

「消化器に問題があれば、血も不足していく体質かもしれない」と漢方では考えます。

食べ物もそうです。
食べ物は血の原料になります。
質の悪い原料からは質の悪いものしかできないと思います。

血の巡りも数値では、はかれません。
いっつも足が冷えていて、血の巡りが悪くない自信はありますでしょうか?

漢方では全身のいろいろな症状や状態から血の巡りが悪いかどうかを探っていきますが、女性の場合は、血の巡りの悪い方が非常に多いです。

その他にも根本的な疲れと関わる睡眠。
睡眠に関わる神経などなど、当たり前ですが、実験のカプセルの中の内膜と卵子だけで赤ちゃんをつくるわけでは ないので、全身のいろいろなことが、妊娠成功に関わっています。

全身で赤ちゃんは育てていくのですね。

ちなみに病院がやってることはホルモン剤で命令するだけ。みたいな感じです。
ガミガミ命令だけ。

妊娠できない問題を考えるのに、人間の身体を切り分けて分析していくことは、論理的に考えるのに有効だと思います。
しかし、治療の際は「人間の身体」に合わせて全身のバランスを考えて、調整するのが良いのではないかと思います。
人間の身体は機械じゃないですからね。

卵子の質や能力が高いことは、妊娠に必要なことだとは思いますが、実際の治療では、全身の状態やバランスをどう調整したら、いいのかも、考えたほうがいいんじゃないかと僕は思います。

僕は漢方のそんな全体のバランスを調整する考え方が好きです。