漢方薬をホルモン剤のように使う方法

漢方薬でも不妊治療の病院のホルモン剤のような使い方をすることがあります。

誤解されるといけないので、先に漢方の治療概念のことをお話ししておくと、漢方の治療は、基本的には、その方の今の体質をみます。
「熱が上半身だけに偏って巡っていて、足が冷えていて、気は胸の辺りに滞っている。おしっこは少なく水の巡りが悪い腎虚もある。」
など、気・血・水・熱・寒・虚・実などの体内のシステム的な要素に関わっている部分と肝・胆、心・小腸、脾・胃、肺・大腸、腎・膀胱などの五臓六腑などの臓器に関わっている部分など体内を健康に保つために必要な要素が、それぞれバランスを崩して病気になりますので、そのバランスの崩れを正しい状態になるように調整します。

この時に注意しないといけないのは、何か1つの要素だけが悪くなっているわけじゃないということ。
例えば「血の巡りだけが悪い。お血タイプ」とか「冷えだけがある。寒証タイプ」なんて1つの原因や1つのタイプの体質なんてことは、まずありません。
漢方の体質論では複数の要素のアンバランスが同時に起こっていて、今の病的な複雑な体質を作っています。

これを調整するというのは、先ほどの状態の方なら、熱を上半身から下半身に向かって巡らせ、その結果、足が温まるようにし、胸に滞っている気は発散させ、腎の臓の気を補って水の巡りを整えてオシッコなどの問題を解決し全体を調整します。
これらを基本は1種類だけの漢方薬で治療します。
これが漢方治療のスタンダードな形です。

何かの病気を治す場合、こういった漢方治療が良いのですが、ただ不妊症の治療の場合は、厳密に言えば病気を治療するわけではないので「体質を整える」だけでは、うまくいかない場合もあります。

女性ホルモン系をあえて刺激する。といえばいいのでしょうか。
漢方治療は体質を整えることが大前提ですが、その体質を踏まえつつ、ホルモン系を刺激していきます。

ただ、ここでも誤解されるといけないので、1つの事を理解しておいてもらいたいのですが、病院が当帰芍薬散などを「黄体ホルモンを活性化する」とか言ってるような、そんなホルモン系の刺激のことではありません。

あれは、漢方の医学理論とはなんの関係もありません。
漢方とは何の関係もない西洋医学の方法で勝手にホルモン活性がどうとかこうとか言ってますが、本来の漢方医学にそんな事実はありません。
漢方はあくまで体質に合わせることが治療です。成分がどうたらこうたらというのは、西洋医学側の勝手な言い分です。

女性の月経周期と言うのは非常にデリケートなので、今までずっと順調に来ていても、ある時、フッと遅れたりすることがあります。
また、いつも順調に高温期に移行していたのが、低温期のままだったり。

そんな時には、今まで体質に合わせた漢方薬を続けてきて、起こったことなので、そのまま同じ漢方薬を続けていても、うまくいかない可能性が高いことが考えられます。

この事態になった場合は、その人の体質にバッチリと合った漢方薬でなく、例えば、温補補血といって、温める力と血を補う力がその人の今の体質に対して、強い目のレベルのものを使います。

持ってる体質よりも漢方薬の働きの方が少し強い感じにするのですね。
これによって、身体の中に刺激を与え、あえて、ややアンバランスにするのです。

そうすることによって、来なくなった月経や高温期に移行しなくなった状態を変化させます。

もちろん、この時もどんな人に対しても月経をこさせることのできる漢方薬とか、どんな人に対しても高温期に移行させることのできる漢方薬というものがあるわけではありません。(マニュアル的に漢方薬を処方している先生には残念ですが)

その人の今まで飲んできた漢方薬という流れがあって、その漢方薬を考慮して、そこから変更していきます。

なので「月経が来なくなった」「高温期に移行しない」と同じ状態の人に対しても、それぞれ体質は変わってくるので使用する漢方薬はみんなバラバラ。
過去にどんな漢方薬でどんな変化があったかを考えながら、あえて、違うレベルの漢方薬に変更していくのですね。

この時にソフィアじゃないけど、漢方薬を切り替えてから「何日後には月経が来ると思いますよ」とお話しすることがあります。これが結構、その通りに来ています。

もちろん、漢方薬の場合は、ピルのように外部からホルモンを足して無理やりホルモンバランスを変えるわけじゃないので、かならずしも全員が予測した日に月経が来るとは限らないのですが。

ただ、ソフィアなどのピルに比べて、危険性も副作用もありません。
何せ、自然薬の漢方薬なので。

その自然薬でもピルのような使い方はできるのですね。
もちろん、東洋医学的な体質診断せずに症状だけをあてはめているような病院の漢方処方ではこんなことは不可能なので、病院でこんなことをしてくださいとお願いするのはやめましょう。

病院は処方する漢方薬は最初っからマニュアル的に決まっているので医者が困ると思います。

漢方薬の基本はその人の東洋医学的な体質に合わせて選ぶものですが、あえて体質を外すことによって、こんな風な使い方もできるのですね。