不妊症に鍼治療ってどうなの?

昔っから患者さん達に「不妊症に鍼ってどうなんですか?」って聞かれていました。

鍼もどちらも東洋医学で、昔は鍼と漢方薬は分けて考えていません。
どちらかというと2つで1つといってもいいくらいなので、当然、漢方薬と同じ位いいものだということになります。

でも、僕は「鍼はやめておいた方がいいよ」とお話ししていました。
なぜか?
それは実体験から、そうお話ししていました。

まず、うちの隣って鍼灸院なのですが、うちが開業した時にあいさつに行った時に僕も「東洋医学なんですよ!先生は、どういった流派ですか?」って聞いたら「ポカン・・・」とされました。

それから、うちの近くの鍼灸院を家族に片っ端に行ってもらったのですが、どこも「東洋医学的な体質を見る」ということをしませんでした。

電気あてて、脈診っぽいことして鍼をちょっと打って、後はマッサージ。
うちの家族に聞いてみると、ほぼマッサージで東洋医学的な体質なんかみてないとのこと。
「証」なんて言葉すら知らないんじゃないかとのこと。
「証」って漢方での体質の要素のことです。

その時に隣の先生に東洋医学のことを聞いても「ポカン・・・」とされた意味がわかりました。

それから、鍼の経験のある患者さんに治療の内情を聞いても、どこもどう考えても東洋医学的な「証」を出さずにトリガーや凝ってる患部に直接、鍼を打ってる感じ。
いわゆる漢方薬で医者がやってる病名や症状にあてはめて漢方薬を出しているのと一緒の病名鍼というものです。

なので、鍼のことを聞かれた場合は「鍼はすごくいいものだけど、まともにできる人がほぼいない感じです」とお答えしていましt。

うちの患者さんから鍼の要望が結構あるので、ブログでも「鍼の先生で東洋医学的体質(証)をみて鍼を打てる先生がいたらご連絡ください。患者さんを紹介いたします」と何度か告知しましたが、誰も連絡をくれませんでした。

そして、この間、僕は事故に合って右手の人差指を怪我しました。
2つの病院(1つは指専門の医師、もう一つは整形外科の院長)で治らないと太鼓判を押されたので、途方にくれて友達の鍼灸の先生に「僕の怪我、治せる?」って連絡しました。

そうしたら、2つ返事で「治せますよ」

そして、今2ヶ月ほど鍼治療してもらって、病院が一生治らないと言っていた指は、90%ほど治ってきています。
今の経過でいくと完治しそうな感じ。東洋医学さまさま!

それで鍼の認識を改めました。
鍼スゲーっ!

実はその友達は前から知っていたのですが、鍼で本当の治療できると思ってなかったので、今までは鍼の話は詳しくはしていませんでした。

いろいろと話してみると、ちゃんと体質(証)を見て治療できる先生です。
僕も病名や症状で漢方薬を合わさず、ちゃんと体質(証)で合わせます。
もちろん、自分の怪我でも体質と漢方薬を合わせて飲んでいました。
今回の自分の治療に当たって、その先生と話していると、いろいろと東洋医学的治療の方針が一致するのですね。

考えてみたら、もともと、大昔は同じ先生が鍼と漢方薬の両方の治療をしていたのだから一致して当たり前ですね。
ただ、今ままでは鍼を東洋医学として、まともにやってる先生に出会えなかったのです。

毎回、「漢方薬の体質から考えたら、こうこう、こんな状態だから、鍼ではこんな感じで治療してはどうだろうか?」とお話しすると「それだったら、こうこう、こういう治療方法も加えてみたらいい」と治療方針の打ち合わせをしながら治療してきました。

それで、うちでなかなか妊娠しづらい方が何人かいらっしゃいますので、この先生なら大丈夫だと考え、不妊症でも鍼の治療をお願いしました。

そうしたら、今お一人、妊娠した感じです。
今は妊娠状態を保つ漢方薬と鍼治療の併用です。

「偶然じゃないの?」と思われるかもしれませんが、この方はうちでも何年か通っていただいていて、体外受精も6,7回経験されています。

なかなか、状況が打開できなかったのですが、鍼で状況が変わった感じです。

鍼治療ってすごいなと思いました。

ただ、ここで誤解されると困るのですが、その鍼の先生に聞くと体質(証)を見て鍼を打てる人(つまり正当な東洋医学の方法)で治療できる先生は、ほぼいないと考えてもらっていいとのことです。

そして、保険診療では、良い先生に巡り合うのは不可能だそうです。
いろいろな健康保険上の制約で自由に治療ができないからです。
うまくいったとすれば、それはラッキーでしかないとのこと。

鍼治療はすごいと思いましたが、やはり「鍼はすごくいいものだけど、まともにできる先生がほぼいない感じです」というのは間違っていなかったようです。