自分に合っているホルモン剤はあるのか?

うちによくある質問シリーズです。
よく病院からうちにこんな電話がきます。

「今、病院で○○の薬が必要って言われたんですが、これって必要です?」

僕を頼ってくれて非常にありがたい電話なんですが、中にはリアルタイムに医者と話している時に僕に電話してくれる人がいて、それはお医者さんのプライドがズタズタになるからやめてください。って話してます。

こんなことを書くと医者みたいにえらそうにって意味不明なメールが来たりするので、先に言っておくと、僕は立場的に病院の薬に対して指示できないし意見する権利もないことをご説明しています。
また患者さんもその法的な権利関係も理解されています。

ただ、患者さんも法的な権利関係がどうとかでなく現実の今の病気に対してどうすればいいのか聞きたいのですね。

実際、病院で質問したってちゃんと答えてくれなし、何を言ってるかわからないそうなので、うちでその新薬はどういった薬理なのか。僕であれば、その薬をどう使うかをお話しして、僕の意見を1つの参考にはしてもらっています。

確かに病院での薬の働きの説明ってレベルが低いです。
「咳を止める薬です」とか抽象的すぎるんですよ。
処方箋の説明の紙を見たら「咳を止める薬」が2つあって「痰のすべりをよくする薬」が2つあって。と「なんか薬の名前は違うけど、説明みたら、みんな同じじゃない?」みたいなものが並んでます。

うちでは新薬のことを質問されたら薬理のことを説明しますが、わかりやすく工夫して説明すれば、皆さん、理解されます。
薬理的な説明だったら、それぞれの薬の働きの違いが良くわかりますからね。
ちなみに薬理は「僕の考え」ではなく製薬メーカーさんの添付文書などの公式のものから引用していますので、僕が勝手に言ってるものではありません。

病院の薬だって同じ添付文書などに基づいているので、一緒ですよね。

そんな感じで風邪、湿疹、耳鼻科系などいろいろなジャンルの処方箋の薬のことをよく聞かれます。

もちろん、不妊症のホルモン剤などについてもよく質問があります。

ホルモン剤も効果の説明が適当というかファンタジーな感じですよね。
「本当にそんな効果だったらいいなぁ〜」みたいな。
「排卵するようになります」とか「内膜が厚くなります」など。
うちは漢方なので病気全体の相談を受け付けているのですが、不妊症系の治療や薬の説明って他の内科や皮膚科などに比べると、より薬の説明が自分達にとって都合がいい。というかレベルが低い感じがあります。

不妊症で病院の薬のことでよくある質問が「今のタイミングで○○のホルモン剤を飲んでもいいのか?」という質問。

とくに体外受精などの高度治療になると結構、いろいろなホルモン剤を使います。

よくあるパターンは子宮を休ませる(この説明が意味不明)のに使うピル(ソフィアなど)

飲んだほうがいいのかどうかというよりも「私の体質に合っていますか?」という質問。

これ、うちでしかない質問かもしれません。
うちで治療するときは「あなたの体質は現状は○○体質です」そして「その体質に合う漢方薬の役割は○○です」と体質のことを細かく明確にお話しします。

大半の漢方相談しているところの現実は「あなたは瘀血タイプです」とか、体質というよりも、ざっくりした「タイプ」しか説明しません。
「A型は几帳面で〜」みたいなステレオタイプな感じですね。

これだったら自分の体質と薬が合うのか合わないのかなんて、ざっくりすぎて気にならないですが、細かく説明されたらホルモン剤だって身体に入れるものですから、やはり自分の現状の体質に合っているかどうかが気になってきますよね。

そして実際に漢方的な体質は今のあなたの自然的な体質をみているので、新薬やホルモン剤だって、その体質と関連してきます。

でも、新薬やホルモン剤と関係はしていますが、それがいいか悪いかは厳密には判断できないのです。

なぜか?
それは、西洋医学と東洋医学は考えが全く違うから。

漢方の場合は、冷えの体質(便宜上簡単にしてますよ)の人を治すのに温める漢方薬を使いますが、この時にただ単に温めればいいのではなく、温める強さや血の巡りが悪いから冷えるのか?気が滞っているから冷えるのか?などいろいろな経路から考えて治療します。

でも、西洋医学の薬はもっと単純なんです。
ホルモン剤は、ただホルモンを加えるだけ。
しかも、西洋医学は「人それぞれの体質」に合わせるのではなく「人間」に合わせるのです。30歳の不妊症の人も40歳の不妊症の人も同じ不妊症としてクロミッドならクロミッド、ソフィアならソフィアを処方します。

せいぜい、薬を使い分けるとしたら「40歳の人は年齢高いから強めのホルモン剤か注射にしとこー」位しかないんじゃないですか。

これだって体質に合わせての治療ではなく「40歳」はみな同じ体質としてみてますよね。だから、だいたい、みんな同じ薬を処方されてたりするんですよ。

となると、もともと、西洋医学は「人間」という条件と「年齢」位でしか使い分けていないので、漢方的にみた「あなた自身の体質」に対してホルモン剤が良いのか悪いのかは判断できないのです。

そもそも、最初から、その人にとって実際には、どれくらいの量のホルモンが必要なのかもわかってませんから。

ホルモン剤以外の薬だとある程度、今の状態や体質にその薬が必要かどうかは判断できます。
それは効果が決まっているからです。
その決まっている効果を「緊急性」と「対処的な治療が役に立つかどうか?」を条件に考え合わせるのです。
(この辺を詳しく書くととても長くなるのでまたの機会に)

でもホルモン剤は漠然とホルモンを加えるだけなので、どんな人に、どれくらいの量のホルモンが必要なのか西洋医学でも東洋医学でもわからないのです。
西洋医医学でも厳密にはホルモン治療は出たとこ勝負だと思いますよ。

うちとしては、とりあえず、やってみて、その後の細かな症状や状態の変化をお聞きして、対応するしかないわけですね。
とは言っても、うちでは一応、過去の状況をなるべく詳しく聞いて推測を立て、リスクが少なくリターンの多い方法を患者さんと一緒に模索はしますが。

不妊治療は体質別に見ることができない西洋医学の弱点が最も露出しているジャンルかもしれません。