不妊治療と無月経に使うピルの効果

ネットっていろいろな情報が瞬時に知ることができてすごく便利です。
でもその反面、デマくさい記事も多いですよね。

特に医療系の情報に関しては「あ〜このページって、基礎生理学や薬理学をほとんど知らずに書いてるな」って思う記事が多いです。

しょうがないですよね。身体の働きや新薬の化学的な作用機序なんて、誰でも理解できるものではないですから。
こればっかりは、ネットで調べたって基礎知識を理解していないと、怪しい知識になってしまいます。

そんな感じで、ごく一部の薬の知識やデータなどを集めて詳しくまとめているサイトなんかが多いんですよね。
この前もネットで、ものすごく素人臭い記事を見つけました。

ピルって危ない薬じゃないよ的なページです。
ピルって聞くと「避妊薬」ってイメージですが、それが「避妊薬だけでなく結構、いい薬なんだよ」って説明していました。
そのページのリンク載せようと思いましたがピル関連の素人臭い適当なページって山のようにあるので「ピル 作用 効果」などで検索してみてください。

ページの大筋は「ピルは正しく使えば問題ない。それどころかいろいろ利点もある!」みたいな内容なのですが、ここで少し気になったのが、ピルは婦人科系の治療薬や不妊治療にも使われている→だから安心みたいな流れの話。

うちは不妊治療の患者さんが多く、また若い人の無月経の相談なども多いです。

どちらも治療薬としてピルを使っていることが多いです。

不妊症や無月経の治療薬と聞けば「何かを治してくれそう」なイメージがあると思いますが、ここはイメージで考えないで冷静な薬理で見てみましょう。

病院の薬ってイメージだけで見ないほうがいいです。
薬理で考えると「そんなので根本的に治るわけないじゃん!」みたいなのばっかりですから。
(治らないってわけじゃないですよ。根本的な解決にはならないという意味です)

例えば、不妊治療の体外受精でよく使うピルで考えてみましょう。
よく使われているのはソフィアAですね。
他にもプラノバール、ノアルテンーD、マーベロン、トリキュラーなどがありますね。 

これの中身を見てみると、ただ、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合成されたものです。

月経リズムには排卵を除けば大きく2つのホルモンが関係しています。
子宮内膜を充実させる卵胞系のホルモンと主に高温層などに活躍する黄体ホルモンです。

これら2つのホルモンが血中に存在していると身体は排卵を促すFSHとLHホルモンを抑えます。その結果、排卵がなくなります。
これは避妊に対する効果ですね。

不妊治療や無月経の治療に対しては卵胞ホルモンが子宮内膜を充実させていきます。
また同時にもう一つのホルモンである黄体ホルモンが体温が上げて子宮内膜を維持します。
いわば擬似的な高温期ができます。
そしてピルを中止すれば、高温期の終わりですね。
薬でつくられた偽の高温期ですが、高温期が終われば月経がきます。

不妊治療では「子宮を休ませるために使う」とよく説明されていますが身体自体は月経までの動きをさせられますので、何が子宮の休憩になっているのかよくわかりません。自前のホルモンを使わなくていいからでしょうか?
でもホルモンの使用量なんて更年期真っ只中でもない限り微量なんですけどね。

このピルの流れって、本当に無月経の人の治療になっていると思います?
要するにピルが身体を騙しているだけですよね。

名目上の月経。はっきりと言えば、ハリボテの月経のような感じ。
外部から無理やり化学合成ホルモンを入れれば、そりゃ月経起こりますよね。

でも、そんな月経を起こすことが本来の目的なのか???

無月経で困るのは、経血の出血という月経イベントが来ないことだけじゃありません。
月経というのはホルモンの絶妙なバランスと連携で成り立っているのです。
それが自然妊娠や肌のなめらかさや髪の艶やかさにも関わっています。

月経さえ来れば、出血さえすればいいのではなく、全体のバランスが良くならないと本来の意味がないのではないかと思うのです。

だから「ピルも治療薬で結構いいものだよ」っていうのはちょっと違うと思うのです。

旅行などで1回だけ月経をコントロールする。どうしてもコンドームが使えない事情があるので一時期だけ使用する。これだったら、その場しのぎで使っても問題ないし病院の薬の本来の使い方ですよね。

確かに無月経だったのが、ピルの刺激でその後よくなることってあると思いますが、うちの相談経験からするとほとんどの人が「ピルを飲んでいる間は月経があって、ピルをやめたら途端に来なくなった」というパターン。

この結果だと要はピルによる偽月経が起こっているだけで決して治ってません。
無月経の人は「偽月経」でもいいから月経起こしてもらいたいわけじゃないと思います。

バランスのとれたリズムのある自然月経を求めているのではないかと思うのです。
それが治療だと思います。誤魔化すことが治療ではありません。

いろいろな素人臭いまとめページに「ピルは治療でも使われているので怖いものではないですよ」って言ってますが、治療で使用はしていますが、根本的には治せてませんので、この辺りの「治療の現実」を知っておいてもらいたいなと思います。

結局、自然の月経リズムじゃなくても妊娠反応の陽性は可能だと思うのですが、その後の出産までの10ヶ月はどうなんだ?と思います。

ピルをきっかけに、その後はピルをやめても正常な月経リズムが続いている人はいいと思いますが、ピルをやめたら月経が来ない人は、自分の身体としては、なーーーんにも治っていないわけですから。

不妊治療の病院は妊娠の陽性反応までが仕事です。
その後の領域は産婦人科。
妊娠陽性反応を出すのがゴールだったら、強い薬を使えば使うほど受胎の成功には近づけるわけです。

では、その後の出産までの10ヶ月は自分の体質です。
でも、それは不妊治療の病院からしたら、きっと関係のないことなんでしょう。