不妊症にハッキリとした原因はない。

不妊治療の漢方相談は、かれこれ8年位になります。
体外受精との併用治療や漢方薬のみで全くの自然妊娠を目指す人、持病や難病があって、不妊治療をされる人、いろいろな不妊症の漢方相談をさせてもらってきましたが、この半年位、今までになかったようなパターンがあります。

それは、男性のみの不妊症相談。
このパターンは、8年間の相談の中でなかったです。

この状況は、ある種は歓迎すべきことです。
歓迎というと変な表現になるかもしれませんが、今までは不妊症相談のうち、7割くらいは、男性側が協力的でなく、女性が一生懸命、一人で治療されていました。
そこで、いつも苦労するのは、ご主人にどう協力してもらうかが、妊娠成功の1つのキーポイントでした。なにせ、妊娠は2人でないと成立しないですから。

それが男性側が率先して治療に来てくれる。
これは治療としては非常に良い事です。
しかし、今度はご夫婦お二人が治療ではなく、男性のみ。

もちろん、女性の方は、他で治療されているかもしれないし、どういう状況なのかわかりません。男性のみの治療で来られているので、特に2人で治療したほうが良いとは僕からは言わないので。男性側はうちで治療して、女性側は他で治療。合わせてお二人で不妊症を克服するのかもしれません。

でも、もしも女性は何もしていないのであれば、以前の男性側が協力してくれなかった状況が、ただ交代しただけのようにも見えます。

この状況って僕は病院やネットのサイトなどが患者さんを誤解させているんじゃないかと考えています。

どんな誤解かというと「不妊症には原因があって、その原因がなくなれば妊娠する」という誤解。幻想。

病院は不妊症を「治療」します。
でも、不妊症って実は病気じゃないんですよね。

もちろん、病気としての不妊症もあります。
そもそも体外受精って、かつては病理的に何も問題のない人のためのものじゃなく、子宮ガンなどの病気のある人の「治療」でした。
これは不妊症を克服する治療です。

他にも状態のかなり悪い子宮筋腫や両方の卵管が閉塞しているなど、不妊につながる病気があります。
これらは手術などの「治療」によって原因と考えられるものが取り除かれます。

そして、この原因が取り除かれれば妊娠するのか?
妊娠するとは限りません。先程の病気は目に見えて妊娠を邪魔している原因ですが、不妊症の全ての原因が子宮がんや子宮筋腫や卵管閉塞に集約されているわけではないからです。

多分、9割の不妊症で悩んでいる方の不妊の原因は、何かというと「不明」です。
だから、さっきの病気の「原因」が手術で取り除かれても、ただ単にほとんどの人と同じ「原因不明の不妊症」に昇格するだけの可能性もあるのです。

さっき、9割の人の不妊症の原因が不明だと話しましたが、これは現時点の医学や科学力ではわからないということではありません。
多分、これからも、原因は全くわからないと思います。

西洋医学は原因を究明し、それに対応した薬や手術でもって治療します。
発祥は、ケガの治療や病原菌の治療です。
ケガは原因がはっきりしています。どこかが切れていたらそこを縫う。
病原菌もその菌を殺せる薬を使い原因の菌がなくなれば、治ります。

でも、西洋医学ができるのはここまで。
後の大半の人が悩んでいる慢性病は原因を突き止めることができません。

なぜか?
それは、原因が人それぞれ、無数にあるからです。
アトピーの人に対して西洋医学では治療としてステロイドを処方します。
ステロイドは、炎症をしずめるものなので、塗れば湿疹がなくなります。
しかし、これはよく考えたら原因に対応しているのではありません。

湿疹の原因は炎症ですが、それは、よく考えたら原因ではなく、湿疹を「詳細」に見ただけのこと。
原因は、それこそ人それぞれ、食事だったり、ストレスだったり、家の環境だったり、人それぞれ無数にあるのです。

また1人の人に1個の原因ではありません。
食事も悪いし、ストレスもあるし、家の環境も悪いし、冷えるし、などなど、全部、関係している人だっています。その人、その都度、原因が違っているはずなので「アトピーはこれが原因!」なんて永遠と見つけられません。全世界、全人類に共通した原因なんかないからです。

不妊症はもっと高度になってきます。
不妊症にも全世界、全人類、共通の原因なんかないのです。
だから、逆に病院で検査して何の原因もなかったとしても、それは当たり前なんですね。
病院で何も原因がなければ、大半の不妊症で悩んでいる人と同じ「目立った原因のない普通の不妊症」なんですね。

こういった、病院が与えた間違った「原因感覚」が、ひょっとしたら、病院で原因がない場合は何もしなくても、妊娠すると思われているのかなとチラッと思いました。

不妊症は、治療ではありません。
人間は動物中で最も妊娠しにくい動物です。
健康で若いカップルが1ヶ月に全部、性交したとしても25%しか成功しないそうです。
確率が半々もないんですよ。

漢方での不妊治療は、何か原因を見つけ出す事ではありません。
体質としての弱点は探しますが、それを調整して、どんどん健康にしていきます。
そして、不妊症の場合は他の病気と違って健康になったら、OK!とはなりません。
30歳までのカップルだったら、それでいいかもしれないですが、青天井で、どんどん元気にならないといけないのです。その2人の元気な力が妊娠につながるのです。

不妊症で病院に通っている大半の人は、男女ともに西洋医学的には何も問題も原因もない人達です。
その人達が病院で治療して授かる確率がたった30%です。

男性側の検査数値が良くなっても、その他大勢の不妊症の方の仲間入りするだけの可能性もあります。
漢方が良いという事ではなく、食事やら運動やらで妊娠はご夫婦とともに取り組んでいただいたほうが確率が上がると思います。
そうしないと、うちでよく聞く「2人とも原因はないのに妊娠しないのよね」というループにハマってしまうこともあります。