男性不妊症の不都合な真実

最近、男性不妊症を意識している方が多くなってきたようです。
不妊症をお二人で克服する風潮は非常に良いことだと思います。
結局、お二人で成功させるものですから。

しかし、一方で、まだまだ「不妊症は女性の問題」と決めてかかっている男性も多いようですね。
女性から見ると結果(妊娠)が出ていないのだから、どっちがどうってこともないんじゃないの?って思われるところかもしれません。

男性不妊症って、「本人が治療してみたほうがいいかな」と言わない限り、実はお店側的には触れないほうがよい問題です。
というのも、日本は封建制度が長かったせいなのか、男尊女卑の慣習が長かったせいなのか、わかりませんが男に問題があるというのは、ある種「弱い」とうイメージとプライドに関わってくるからです。

だから、男性不妊症のことに触れると理由なく怒ったりする人もいたりして、中には「こんな余計なことをいう店の言うことなんか聞く必要がない!」なんて、奥さんの治療も中止せざるえない意味不明な状態になることがありますので、ご本人から言い出さない限りは、店側的にはあえて触れないほうが、実は得なんですね。

でも、うちは妊娠という結果を出してもらいたいので、そこはグサ!グサ!と書いていこうと思います。

その前に、僕ら夫婦もかつて不妊症で悩んでいました。
当時、嫁さんの体調や基礎体温も理想的ではなかったので、嫁さんの方にも問題はあったと思いますが、今から考えると冷静にみて、どちらかというと僕が不妊症の原因の決定打だったのではないかと思っています。密かに。

僕が不妊症の原因だったかもしれないとは思いますが、当時、僕は病気などは何もありません。
ただ、ただ、体力がなく弱かっただけ。
ちょうど、漢方の修行をしていた時で、それまでは週1でサーフィンをしていましたが、漢方の修行で趣味どころではなく、サーフィンも全く行かなくなりました。
その時の体重がピークの−15kgのガリガリのキモ男。

僕も漢方薬を飲んで体調は取り戻しましたが、一向に妊娠の気配なし。
そこから、僕も心機一転、サーフィンにも行くようになり、ガシガシ筋力トレーニングも始めました。
そうして、ようやく元の体重や体格に戻った頃に嫁さんが妊娠したんですね。

一般的に不妊症って、とても大きな誤解があると思います。
そもそも、不妊症は病気ではありません。

逆に病気レベルの不妊症はシャレにならないですよ。
うちでは「病気としての不妊症」として悩んでい方を何人も見てきています。
女性なら甲状腺がらみの無月経とか、男性なら精巣静脈瘤とか、検査受けて、ちょっと薬飲んだら、なんとかなるんじゃない!みたいな甘いレベルではありません。

一般的には不妊治療って、よばれるから病気みたいに思いますが、ほとんどの人は病気じゃないのです。
では、何かというと、年齢の問題や今の生活などで疲れたり、細かな体調の不調があって、妊娠に至るまでの元気がないことなのです。

これは女も男も同じです。
病気だと考えると、どちらかになんらかの原因がある。
そして、男性は大概、深く追求しないで、自分には原因がないと決めつけることが多いです。
なぜ、決めつけるか。
それは、自分にも、おぼえがあります。
女性にはどうでもいいプライドですが「精の強さ」ってイコール「男の強さ」みたいに思っているところがあります。
だから、決定的な原因があれば、「しょうがない」ってなります。これは「弱い男」確定。
それに対して原因がなければ、原因もないのに「弱い男」になってしまうわけです。
男にとって、どっちにしても難儀な状態になるのです。

だから、不妊症の問題には、真正面からぶつかるのは、なんとなく避けたい心理が働いてしまいます。
おそらく深層心理レベルです。

不妊症が病気ではないわけですから「どっちかが原因」というのは不毛な考えです。
「どちらかが病的な原因がある」と考えるよりは、不妊症克服で必要なのは「自分は完璧に元気でパワフルな人間だ」と言えるかどうかです。

そうでなければ、そこを目指さないと妊娠にはいたりません。
病気を治すのではなく、赤ちゃんを授けてもらえるレベルなのかどうかなのです。

だから、うちでは「検査で問題なかったなんて、ただ単に自然妊娠の参加資格をもらっただけで、それが成功には結びつくかどうかはわかりませんよ」とちょっとキツめのお話をします。

しょせん、参加資格なんですね。現に検査するまで、結果(妊娠)が出てないから検査したわけじゃないですか。

妊娠に至るためには、その苛酷な生存競争レースで優勝することです。
実際に妊娠に至るには、男性にとっては1億匹の精子が9999匹、死んじゃっても1匹だけが残ることによって成功します。
文字通り、超苛酷な生存競争のレース。
自分の分身が勝ち残れる力を持っているかどうか。

そのレースに参加資格(検査で問題なかった)だけゲットして、うまくいくほど簡単ではないのです。

女性も男性もより強く、より強くならないと、新しい生命はつくりだせません。
そんなに甘くありません。
なにせ、人間は動物の中で一番、生殖率が悪いんですから。

漢方は体質を整えるバックアップをしてくれます。
しかし、漢方薬は、厳密には治療しているわけではありません。

自然治癒力が身体の不調を調整するお手伝いをしているのです。
不妊症を克服する場合は「なんとなく病的症状がなくなればいい!」というものではありません。

「より強く!」「より元気に!」です。
どっちかに原因があるなんて、あら探ししたって、現実には得がありません。

僕も当時は自分も半分原因だと思って、邪魔の要因になるものは、なるべく取り除き(アルコールとタバコは元からやってないので、やめる必要はなかったですが)食事を整え、筋力トレーニングで体を強くしてと。できうることは、いろいろしました。

その結果、自然妊娠成功!
僕は病気などの理論的なメカニズムが好きなほうですが、不妊症の克服は最後は、ある種ちょっとした根性論です。

最終的には人間として強いかどうか?
単純に強い動物が、子孫繁栄の力を手に入れるのです。
これは地球上の生命体の原則です。

不妊治療の奥の手

うちでは、漢方薬のみでの自然妊娠を目指している方が多いです。
もちろん、強制ではなく「うちで治療する場合は、病院やサプリメントを一切やめていただいても、自然妊娠できるようにお手伝いします」というのが、うちのコンセプトです。
(体質によりますが40歳以上の方は病院の治療も視野にいれないといけないケースもあります)

コンセプトは適当に「言ったもん勝ち」ではなく5年間、体外受精にチャレンジしてきたけど、うちで全くの自然妊娠をしたなどの実績ありきでご提案させてもらっています。
もちろん、西洋医学とうちの漢方薬との併用の方も多数、いらっしゃいますよ。

どちらにしろ、漢方薬には、それだけの力があるのですね。
漢方薬は補助的な治療ではありません。

そんな感じで、うちの漢方薬のみで自然妊娠している人が多いので、どんな体質の人にどんな漢方薬を使ったら、どんな風になるのかが、うちではわかりやすいのです。

だって、病院との併用だったら、たまたま「ホルモン剤がよかった」というのもなきにもあらずではないですか。

基本的に漢方治療は、全身いろいろな症状などを聞いて、その情報から「東洋医学的な体質」を判断して、それに合わせた漢方薬を選びます。

間違っても、病院みたいに不妊症なら当帰芍薬散とか、温経湯ではないですよ。
だって、これ体質、見てないし。
「不妊症」って「東洋医学的な体質」なんてありません。

上熱下寒の肝熱とか水毒水証とかといったものが東洋医学的な体質です。
その体質って人それぞれ。
たまたま、最終的な悩みが不妊症ってだけですね。

うちの漢方治療の手順としては、
①身体全身の症状や今の環境などから、体質を分析する。
②体質の何をどう調整したいのか、その方針を立てる。
③立てた方針にしたがって漢方薬を選ぶ。
これがスタンダードな手順。

そして、次回は、その方針に照らし合わせながら、何の症状がどうなったか?
基礎体温に変化はあったのかを見ます。

そして、また、今回の方針を考えて、今回の漢方薬を決定します。
これを繰り返して、体質の調整を繰り返していきます。

間違っても、病院みたいに2、3の症状がよくなった、とかよくなっていない。みたいな、当てもののようなことはしません。

こういう方法でみていきますので、それこそ、人それぞれです。
漢方薬を飲まれてからの反応も人それぞれ。
みんなその都度、その時の状態を分析していくのです。

漢方治療によって、どこにゴール(方針)を置くかを考え、「こういう体質の場合に、この漢方薬を使えば症状は、こう変わって、基礎体温はここにいくはず」という推測が立ちます。

そして、実際に思っているゴールに向かっていたりするわけです。
ところが、年齢が高くなってくると思ったように改善していかないことがあります。

そんな時に、漢方薬の目標からすると、症状などは改善されウマくいっているように見えるのですが、基礎体温が全体的に低かったり、高温期への上がりが弱かったりと。決定的な悪い状態じゃないけど、なんか思うようにウマくいかないことがあります。

そんな時にうちでは、生薬の女性ホルモンを補充するものを加えます。
基本的に漢方治療って、その人の体質に合わせるものなので、サプリのような何かを足してパワーアップ!というのは治療上は、むしろ不利になりがちですが、この女性ホルモンの場合は、うまく働いて、基礎体温を全体的に一段高に押し上げたり、高温期への移行がギューンと上がったりと、縁の下の力持ち的な感じの効果を発揮してくれます。

ただし、これにも弱点はあります。
補充系のものって、どれもそうなのですが、補充しすぎると副作用みたいに逆効果になります。
この生薬の場合もそうです。

補充しすぎると、身体に熱がこもってしまいます。
過剰なホルモン補充は新薬のホルモン剤と同じような弊害も生み、かえって基礎体温を乱すこともあります。

あかくまで、不足しているホルモンを加えるものなのです。
だからうちでは、38歳以上か、それ以下でも必要だと判断した人だけ。
そういった状態の方におすすめしています。

よく他の店では、こういった効果のあるものを「効果がある!」と見るとすぐに倍量にしたりしますが、こういうものこそ、本当にその人に合っているのか、見極めるのが難しいのですね。

うちでは奥の手です。
基本はほとんどの人は「その人の体質に合わせた漢方薬」のみ。
これを不妊症=当帰芍薬散、温経湯みたいなマニュアルで処方せずに治療方針を考え抜いて漢方薬を選べば、誰でも自然妊娠する力があります。

でも年齢などでホルモンの力が弱ってしまったら、こういったホルモン補充系の生薬も有効なことがあるのですね。これは、うちの治療の奥の手です。

不妊症にハッキリとした原因はない。

不妊治療の漢方相談は、かれこれ8年位になります。
体外受精との併用治療や漢方薬のみで全くの自然妊娠を目指す人、持病や難病があって、不妊治療をされる人、いろいろな不妊症の漢方相談をさせてもらってきましたが、この半年位、今までになかったようなパターンがあります。

それは、男性のみの不妊症相談。
このパターンは、8年間の相談の中でなかったです。

この状況は、ある種は歓迎すべきことです。
歓迎というと変な表現になるかもしれませんが、今までは不妊症相談のうち、7割くらいは、男性側が協力的でなく、女性が一生懸命、一人で治療されていました。
そこで、いつも苦労するのは、ご主人にどう協力してもらうかが、妊娠成功の1つのキーポイントでした。なにせ、妊娠は2人でないと成立しないですから。

それが男性側が率先して治療に来てくれる。
これは治療としては非常に良い事です。
しかし、今度はご夫婦お二人が治療ではなく、男性のみ。

もちろん、女性の方は、他で治療されているかもしれないし、どういう状況なのかわかりません。男性のみの治療で来られているので、特に2人で治療したほうが良いとは僕からは言わないので。男性側はうちで治療して、女性側は他で治療。合わせてお二人で不妊症を克服するのかもしれません。

でも、もしも女性は何もしていないのであれば、以前の男性側が協力してくれなかった状況が、ただ交代しただけのようにも見えます。

この状況って僕は病院やネットのサイトなどが患者さんを誤解させているんじゃないかと考えています。

どんな誤解かというと「不妊症には原因があって、その原因がなくなれば妊娠する」という誤解。幻想。

病院は不妊症を「治療」します。
でも、不妊症って実は病気じゃないんですよね。

もちろん、病気としての不妊症もあります。
そもそも体外受精って、かつては病理的に何も問題のない人のためのものじゃなく、子宮ガンなどの病気のある人の「治療」でした。
これは不妊症を克服する治療です。

他にも状態のかなり悪い子宮筋腫や両方の卵管が閉塞しているなど、不妊につながる病気があります。
これらは手術などの「治療」によって原因と考えられるものが取り除かれます。

そして、この原因が取り除かれれば妊娠するのか?
妊娠するとは限りません。先程の病気は目に見えて妊娠を邪魔している原因ですが、不妊症の全ての原因が子宮がんや子宮筋腫や卵管閉塞に集約されているわけではないからです。

多分、9割の不妊症で悩んでいる方の不妊の原因は、何かというと「不明」です。
だから、さっきの病気の「原因」が手術で取り除かれても、ただ単にほとんどの人と同じ「原因不明の不妊症」に昇格するだけの可能性もあるのです。

さっき、9割の人の不妊症の原因が不明だと話しましたが、これは現時点の医学や科学力ではわからないということではありません。
多分、これからも、原因は全くわからないと思います。

西洋医学は原因を究明し、それに対応した薬や手術でもって治療します。
発祥は、ケガの治療や病原菌の治療です。
ケガは原因がはっきりしています。どこかが切れていたらそこを縫う。
病原菌もその菌を殺せる薬を使い原因の菌がなくなれば、治ります。

でも、西洋医学ができるのはここまで。
後の大半の人が悩んでいる慢性病は原因を突き止めることができません。

なぜか?
それは、原因が人それぞれ、無数にあるからです。
アトピーの人に対して西洋医学では治療としてステロイドを処方します。
ステロイドは、炎症をしずめるものなので、塗れば湿疹がなくなります。
しかし、これはよく考えたら原因に対応しているのではありません。

湿疹の原因は炎症ですが、それは、よく考えたら原因ではなく、湿疹を「詳細」に見ただけのこと。
原因は、それこそ人それぞれ、食事だったり、ストレスだったり、家の環境だったり、人それぞれ無数にあるのです。

また1人の人に1個の原因ではありません。
食事も悪いし、ストレスもあるし、家の環境も悪いし、冷えるし、などなど、全部、関係している人だっています。その人、その都度、原因が違っているはずなので「アトピーはこれが原因!」なんて永遠と見つけられません。全世界、全人類に共通した原因なんかないからです。

不妊症はもっと高度になってきます。
不妊症にも全世界、全人類、共通の原因なんかないのです。
だから、逆に病院で検査して何の原因もなかったとしても、それは当たり前なんですね。
病院で何も原因がなければ、大半の不妊症で悩んでいる人と同じ「目立った原因のない普通の不妊症」なんですね。

こういった、病院が与えた間違った「原因感覚」が、ひょっとしたら、病院で原因がない場合は何もしなくても、妊娠すると思われているのかなとチラッと思いました。

不妊症は、治療ではありません。
人間は動物中で最も妊娠しにくい動物です。
健康で若いカップルが1ヶ月に全部、性交したとしても25%しか成功しないそうです。
確率が半々もないんですよ。

漢方での不妊治療は、何か原因を見つけ出す事ではありません。
体質としての弱点は探しますが、それを調整して、どんどん健康にしていきます。
そして、不妊症の場合は他の病気と違って健康になったら、OK!とはなりません。
30歳までのカップルだったら、それでいいかもしれないですが、青天井で、どんどん元気にならないといけないのです。その2人の元気な力が妊娠につながるのです。

不妊症で病院に通っている大半の人は、男女ともに西洋医学的には何も問題も原因もない人達です。
その人達が病院で治療して授かる確率がたった30%です。

男性側の検査数値が良くなっても、その他大勢の不妊症の方の仲間入りするだけの可能性もあります。
漢方が良いという事ではなく、食事やら運動やらで妊娠はご夫婦とともに取り組んでいただいたほうが確率が上がると思います。
そうしないと、うちでよく聞く「2人とも原因はないのに妊娠しないのよね」というループにハマってしまうこともあります。

不妊症の治療に使う漢方薬

今回は現実的な話しをしようと思います。

漢方薬は体質に合わせるものです。
不妊症というのは「そういった状態」を現しているだけで、病気ではありません。
また「不妊症体質」という決まった体質もありません。
不妊症というのは身体の状態を現しているのではなく、ただ単に「2年間できなかった人」これだけ。

漢方薬を使って不妊症を克服するというのは、その人の体質を見極めて、とにかく健康になるように調整していくということですね。

他の病気の治療などと、ちょっと違うところは、特に月経と基礎体温を中心に調整します。
人それぞれの体質に合わせて調整するので、不妊症に当帰芍薬散とか温経湯とかを何も考えずに処方するのではありません。

漢方治療の原則は、その人独自の体質に合わせることなので、体質を分析する前は全ての種類の漢方薬が候補と考えられます。
これは不妊症に限らず、アトピーやうつなど、どんな病気の治療でも考え方は同じです。

ですが、毎回、何百種類とある漢方薬を候補として考えていくわけではありません。
毎回、そんなに考えていたら、数が多過ぎて、いつまでたっても漢方薬を選ぶことができません。

どの病気でも、その人独自の体質に合わせていくという原則は変わらないので、理論的には全ての漢方薬が候補とはなりますが、不妊症なら全体の体質を整えることプラス特に月経周期やホルモンのことなどを考えます。

これらを考慮していくと特に不妊症的な人に使うことが多い候補処方というものに絞り込めます。

それが下の漢方薬群です。
当帰芍薬散、温経湯、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、逍遙散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、キュウ帰調血飲第一加減、桃核承気湯、当帰建中湯、正気天香湯、大柴胡湯、芍薬甘草湯、六君子湯、柴芍六君子湯、四物湯、キュウ帰膠艾湯、当帰散、牛膝散、折衝飲、女神散、呉茱萸湯、大黄牡丹皮湯、通導散、ヨク苡附子敗醤散、竜胆瀉肝湯、六味丸、八味丸

28種類位ですね。
これに例えば、逍遙散と四物湯を合わせて1つの処方としたり、桂枝茯苓丸に紅花などの生薬を加えたて違う処方としたりといった組み合わせの種類がつくれますので、絞りこめるといってもまだまだ種類は増えます。

一般的に漢方って「一番最初に漢方薬を選びさえすれば、後は飲み続けてじっくりと効果が現れるのを待つのがいい」みたいなイメージがありますが、これは全くの誤解です。

病院では当帰芍薬散を処方して、良い効果どころか胃の痛みや胃もたれ、胸焼けなどの当帰芍薬散特有の副作用が出てるのに何ヶ月も処方しっ放し。みたいな意味不明な漢方処方をしているところがありますが、漢方治療とはそんなものではありません。

また⬆の処方群から苦労して体質に合わせて選んだとしても、それが本当に合っていて良いものかどうかは、飲んだ結果を見なければわかりません。

つまり、めっちゃ合っている!絶対に合っている!と考えて漢方薬を選んだとしても、現実は体質に合わなかったことなんて漢方ではザラにあります。
漢方の大原則はあくまで「合っていれば良くなる」といった結果論です。
だから、どんなにエライ先生だったとしても「この漢方薬で良くなるはずなのに・・・」はありえないのです。
これを言ってる先生がいたら150%漢方をわかっていませんので、注意してください。

合っているか?合っていないか?
これにも個人差があります。どこで線を引いて判断するかというと、僕は8年間の実際の経験からみると2ヶ月間、同じ種類の漢方薬を飲み続けて自分の考えた方針通りにいかなかったら、その漢方薬はその後10年飲み続けても無駄です。

さっさと変えたほうがよいです。
この期間も個人差、体質差なので、平均したら最長2ヶ月というだけで、基本的にはもっと短い期間で合っているか合っていないかをみていったほうがいいです。
うちの現実的な漢方薬の変更を検討する期間は慢性病なら2週間〜1ヶ月位までですね。
このときに気をつけないといけないのは、自分の気になる症状がよくなったかどうかではないです。

特に不妊症の場合は、冷えがとれたらOKなんて単純な世界ではありません。
冷えがとれたけど、基礎体温は低温期も高温期も高くなったみたいなこともあります。

漢方治療の目的はあくまで「総合的なバランス」をとること。
身体にある全部の症状、そして基礎体温も全部、ひっくるめて、うまくいっているのかをみていかないくてはいけません。
アッチが引っ込んだらコッチが出たではダメなんです。

そんな訳で先程の候補の処方群たち。
「不妊症だったら、その中から何か1つを選べばいいや」
というものではないということですね。

どの処方を飲むのか?
それを飲んで何がどうなったら合っていたものだと判断するのか?
それは続けたほうがいいのか?変更したほうがいいのか?

これらを常に考え続けるのが漢方薬を使った治療です。

更に現場のお話をすれば、治療戦略的に段階的に初めから漢方薬を変更するつもりであえて初めは違う種類の漢方薬を使って、刺激を与えて、その後の反応をみて漢方薬を変更したり、低温期と高温期の漢方薬の種類を交互に変更していったりするなど、いろいろな治療戦略の組み合わせがあります。

漢方では全てがケースバイケース。
なので、マニュアル的に何か一つを選んで、それを半年飲めば何かが良くなってくるだろう・・・そんな適当な医学ではないということですね。

「えっでも病院でテキトーに処方された当帰芍薬散で妊娠しましたよ!」
そんな人もいると思います。
漢方薬自体はちゃんと効果があるものですから。
同じ処方を出し続けていれば、かならずウマくいく方にも行き当たります。たまたま。
当たったのと同じ位の割合で体質と合っていなくてエラい目に合う可能性もあったのです。

こういうのを行き当たりばったりと言います。
それは博打であって、治療という知的な行為ではないですね。
漢方薬は医学理論に基づいた東洋医学の医療なのです。