クロミッドは来月の治療につながっていくのか?

患者さんから、不妊治療の病院の話しを聞いていると、いや〜出るわ、出るわ。
医者のおもしろ説明。ネタの宝庫です。

その中の不妊治療に通っている方からの医者からの「?」な説明を紹介したいと思います。
って、「基本、医者からの説明って(?)しかないじゃん!」っていうのは、おいといてくださいね。

その方、過去の感じから排卵はしているようです。
そして、さる事情があって、今回はタイミングがとれないということになっていたのですが、とりあえずクロミッドを処方されたそうです。
当然、タイミングがとれないのに排卵させてどうすんの?って疑問に思いますよね。

その時の説明が来月の排卵に役立つとのこと。
今回の排卵時期に飲むクロミッドが来月の排卵に役立つ?

もう、斬新すぎてついていけません。
それとも、西洋医学の生理学はいつのまにか大きく変わったのでしょうか?
昨日、今日に。

クロミッドは薬理作用をごくごく簡単に説明するとエストロゲンを抑えてその拮抗作用で排卵誘発に関わるFSHとLHいうホルモンを活性化させます。
FSHとLHの活性化で排卵を促しますが、そのFSHとLHを活性化させるためにエストロゲンは抑えられます。

この時のエストロゲンは子宮内膜を厚くする作用を持っていますので、そのエストロゲンはFSHとLHの活性化のために抑えられます。
だからクロミッドを飲むと子宮内膜が薄くなるのですね。
タイムパラドックスみたいで、ややこしいですね。
病院の薬ってこんなのばっかです。痛みを止めるけど、胃が痛くなるみたいな。

妊娠を成功させるキーポイントは当然、良好な月経リズムであり基礎体温です。
基礎体温は体温が低温層、高温層って入れ替わっていきますが、あれって、なんで入れ替わっていると思います?

そう、ホルモンの影響で入れ替わるのです。
低温層の時は排卵に関わるFSHやLH、E1、E2で知られるエストロゲンが優位になり、排卵後からはプロゲステロンが優位になります。排卵後もエストロゲンは、やや高い分泌を保ちます。

この時の各ホルモンは、排卵時期に急にドバッとFSHが放出されて、つぎの内膜を厚くする時にエストロゲンがドバッと単発的に放出されるといったものではありません。

各ホルモンは月経周期を通じて存在しているのですが、低温層ではFSHやLH、エストロゲンが特に目立って働き、高温層になるとプロゲステロンが特に目立って働きます。

どのホルモンもゆるやかな曲線を描きながら、上がったり、下がったりして、排卵や高温層、月経というイベントを促しているのですね。
これらのホルモンの流れは皆つながった流れになっています。

排卵があるから高温層につながり高温層があるから月経につながるのです。

ここで一つ考えてみましょう。
医者はエストロゲンを抑え、排卵のFSHやLHを高めるクロミッドが来月の排卵に役立つと説明したわけです。

でも今回、クロミッドの誘発で排卵しちゃって黄体化したら、自動で高温層に移っちゃうので、FSHとLHの優位を保つことはできないのです。

ということは、今回の高温層の間、クロミッドの作用は眠っていて、次の月経期に目覚めるのでしょうか?アニメ的展開です。
僕はアニオタですが、僕でもこんなメルヘンな展開は考えたこともありません。

低温層の体温が低くて高温層の体温が高いのはホルモンの働きの違いによります。
すべて、つながっているから次の排卵につながるわけです。
だから、高温層になっちゃったら、クロミッドの効果はなくなっていることになっちゃいます。
ホルモンは低温層、高温層で役割が違いますので。
来月の排卵に役立つということは、クロミッドの効果が持続するはずなので今回の高温期は低いままで推移すれば成功なのでしょうか?それがなぜ成功なのかその医者にしかわからないですが。

そもそも何日か飲んだクロミッドが高温期を飛び越えて次回の月経から効くなんて、効果が薬をつくった当の製薬会社にもないでしょうが、仮に効いたら、効いたで次回の月経リズムはむちゃくちゃになります。
排卵するけど、基礎体温のバランスはむちゃくちゃみたいな。

次回の月経や排卵は高温期からつないでいくので、高温期をスっとばすということは次回の正常なバランスの月経はなくなるのですね。

この理屈って東洋医学としての理屈じゃないですよ。
西洋医学の生理学と薬理学からの理屈です。

この話しってクロミッドだけに限りません。
スプレキュアで排卵をストップさせる。
ルトラールで高温期を延ばす。
ソフィアで月経を無理矢理、来させる。

元が異常な基礎体温でなければ、すべて元々あるホルモンの自然なつながりを邪魔するのです。

でも、そうはいっても、排卵がうまくいってなかったりもあります。
でもここで、よく考えてみましょう。
それがホルモンが不足していることだけが問題なのでしょうか?

西洋医学は悪いクセですぐに人間をロボット的に見立てて考えようとしますが、ホルモンの関わりでうまくいってないなら、そのホルモンを足せばいいんじゃない!というのは、短絡すぎやしませんか。

発想が単純すぎ。
もちろん、そういった人もいるでしょうが、不妊症の人、みんなが単純にホルモンの不足?
そんなわけないですね。

ストレスや身体の冷え、頭痛、食事内容・・・
いろいろな悪い要素が重なって、ホルモンがうまく働かなかったり、働きがつながらなかったり・・・また、その原因も人それぞれ。

全部、一律、ホルモン不足!
こんな単純な治療はもうやめにしませんか。
西洋医学といえど、やはり一人一人の体質に合わせて治療するべきではないでしょうか。
「不妊症」っていうよくわからない存在を治療するのではなく「不妊症で悩んでいる●●さんの体質」を治療しませんか。