当帰芍薬散は妊娠体質にする薬ではないです!

病院は誤った漢方薬の使い方をしていることが少なくありません。
あっ!でも僕が正しいとか、向こうが間違っているとか、そんな話じゃないから、この表現ははおかしいですね。

誤った使い方というよりは、昔から伝わってきている東洋医学の考え方や診断の方法、それに基づいた伝統的な漢方薬を選ぶ方法をほとんど無視して自分たちの都合のよいように勝手に処方しているといった方が正しいですね。

その最たるものが、不妊症などで処方している漢方薬です。
当帰芍薬散とか温経湯を「ホルモンを活性化させる」とか「内膜を厚くする」などの西洋医学的な部分的な効果のように自分の中で勝手に変えて「不妊症」という体質でもなんでもない「病名」(正しくは症候群だけど)に対して処方しています。

多分、漢方を医学体系的に勉強していない人が多いので漠然と化学薬剤よりも漢方薬は自然のものだから、少しずつ効いてくる?のではないかと乱暴に考えているんじゃないかと感じます。

当然ですが、漢方薬は「ホルモンを活性化させる」とか「内膜を厚くする」効果ではないし、ホルモン剤などの化学薬剤で疲れた身体を飲んでいたら、なんとな〜く勝手にいろいろ治してくれるというような都合の良いものでもありません。

漢方薬は体質を調整するものです。
ホルモン剤のように一方的に黄体ホルモンを増やしたり、FSHを増やしたりといったものではありません。

漢方薬の効果は調整です。
バランスの崩れた場所を見つけだし、あるべき姿に戻してくれるのですね。

昔はよく「漢方薬で体質を変えてくれるから根本的に治る」なんて、ちょっとよくわからないことが言われていましたが体質を変えるわけではありません。

体質をどう見るか?にも関わってきますが、体質なんてよく観察してみれば、子どもの時からずっと一緒ではなく、どんどん変わっているのです。
病気な状態になっていること自体が現時点の体質は変わっていると言えるのです。

確かに親から受け継いだ体質などはありますが、それが現在の全ての体質ではありません。
その遺伝的な体質だけで病気になるわけじゃないのです。

大きな広い意味での体質はそういった遺伝的なものが含まれますが、現在の状態をつくっているのは、それよりも仕事のストレスだったり食事だったりと環境の要因の方が強かったりします。

体質は日々、変化しているのです。

漢方薬が体質を調整するということは、調整のために現時点の体質の弱点を知らなければなりません。
正確にはアンバランスの部分ですね。

どの要素が不足しているのか?
どの要素が逆に多すぎるのか?
体質のデコボコのアンバランスを理解しなければ、どう調整すればよいのかわかりませんよね。

その現時点のアンバランスを調べるのが、漢方の体質診断です。

不妊症は「妊娠しずらい人」のグループを「不妊症」というラベルでくくって呼んでいるだけなので、体質とは何の関係もありません。

なんか、いろいろな原因があって妊娠しずらい人が → これが不妊症のことです。

だから、こんな心細い情報だけで漢方薬なんて処方していたら適当すぎですよ。

「なんか、いろいろな原因があって妊娠しずらい人」
の「なんか、いろいろな原因」を「なんか、いろいろ」で終わらせないで、
詳しく具体的に診断していくのが漢方治療の仕事です。

だから不妊症だったら当帰芍薬散か温経湯にすればいいのではないのです。
もちろん「なんか、いろいろな原因」を調整するのに当帰芍薬散が合う体質の人もいらっしゃいます。温経湯が合う体質の場合もあります。

でも、それは「不妊症」に合わせるのではないですね。
「なんか、いろいろな原因」を分析して、その結果が当帰芍薬散だったわけです。

こうなると体質は人それぞれ。
当帰芍薬散かもしれないし、全然違う処方かもしれない。
漢方薬は「体質」に合わせるのですね。