不妊治療においての漢方薬の選び方

漢方の治療とは身体の中の健康を保つ要素のバランスを調整することが目的です。
治すというよりもアンバランスを直す感じですね。

健康を保つ要素とは気、血、水、虚、実、寒、熱、湿、燥などです。
それに五臓六腑。
この要素が身体の中で調整されていれば、私たちは健康という状態を保てますが、この要素の1つでもおかしくなれば、たちまち不快な症状や病気となって表に現れてきます。

漢方薬は体質に合わせて処方すると言われています。
この体質とは、いわば、さっきの要素のアンバランスを総合的にみた状態のことです。

なんだか、難しい感じになってきました。
例えば「0」が良いバランスの状態だとすれば、

気 0 血 +1 水 -3 虚 -3、実 0、寒 -4 熱 0、湿 -4、燥 0 などです。
それに五臓六腑の肝の臓 +1、心の臓 0、脾の臓 -3、肺の臓 -1、腎の臓 -4。

現実はその他にも病位など時間系列など、まだまだ見ないといけないことがあり、こんな単純に数値化できませんが、単純に数値化するとすれば、体質のバランスをこういうふうにみることができます。

健康な状態というのは全部の要素が「0」です。
漢方では陰陽の法則に従って「プラスが良い」とはなりません。
プラスは過剰。行き過ぎとみます。

気温みたいな感じですね。
20℃を丁度良い状態だとすれば、それよりも気温が高くなれば「熱い」
それよりも気温が低くなれば「寒い」となり、どちらも不快ですね。
良い状態は基準のゼロ地点です。

そんな感じで、ある人の体質というのが、さっきのような数値だとすると、その体質に合わせる漢方薬とはこの数値をゼロにしていくものを選びます。

気 0 血 +1 水 -3 虚 -3、実 0、寒 -4 熱 0、湿 -4、燥 0
五臓六腑の肝の臓 +1、心の臓 0、脾の臓 -3、肺の臓 -1、腎の臓 -4。

この体質に対して 血を -1 水を +3 って具合にゼロにしていく漢方薬を選びます。
冷えてる状態 -4 は、温める効果 +4 でゼロになるみたいな感じ。
これも説明上、プラスとかマイナスでお話していますが、実際はプラスとかマイナスではなく「肝の熱をとる」「表の利水をする」とか漢方薬や生薬によって、いろいろな働きがあります。

こういう体質理論から考えると漢方薬の効果って「●●効果がある」というものではないのです。

病院で説明しているような「当帰芍薬散がホルモンを活性化する」というものが、いかに的ハズレなことをしているか、ご理解いただけると思います。

同様に病名で漢方薬を処方するということが、漢方の医学理論と全く関係のないデタラメなこともご理解いただけるのではないでしょうか。

さっきの要素が同じ病名だと同じ体質スコアになるハズがありません。
この体質スコアは病名など関係なく、人それぞれです。

気 0 血 +1 水 -3 虚 -3、実 0、寒 -4 熱 0、湿 -4、燥 0
肝の臓 +1、心の臓 0、脾の臓 -3、肺の臓 -1、腎の臓 -4

病名など関係なく、華奢で冷えが強いと虚が -5、寒が -5になったりするし、他の数値も変わります。

同じ病気の人でも体力があって、冷えがなければ虚と寒の数値は0か、もしくはプラスかもしれないのです。
それは病名ではなく、東洋医学的な問診をとってみないことには分からないのです。

不妊症という状態でも漢方治療では治療方法は同じです。

体質を見極め、その体質のアンバランスをゼロにできる漢方薬を探し出します。
たいていは、みんな数値がバラバラなんで、そう簡単にゼロのバランスにできる漢方薬なんて見つかりません。

また「症状があるか、ないか」で漢方薬を選ぶ人がいますが、それも間違いなのは、先程のスコアからご理解いただけると思います。

各要素の数値が症状などから推測できる数値だとお考えください。
そこから見ても「症状のあるなし」ではなく、その症状がどんな状態なのか?
こういった要素も重要なのですね。

そして、全てをゼロにした過不足ない状態は健康です。
そして健康な状態であれば、誰でも妊娠する力を目覚めさせることができるのです。

ただ、不妊治療の場合は、ただバランスをとればいいということでもないケースもあります。

あえて、どこかの要素をプラスにもっていって排卵のきっかけにしたり、アンバランスを治療に応用することもあります。

それでも、まずは体質を見極め、バランスのとれたゼロの状態にするというのは基本中の基本です。

しつこいようですが、体質スコアは説明上、分かりやすくデジタル化しましたが、実際はこんな簡単にデジタルで分析することはできません。