漢方薬は体質に合わせるだけじゃ妊娠しないこともある。

漢方治療の原則は、その人の体質に合わせた漢方薬を選んで、体質のアンバランスを整えることです。

体質が調整されることによって、その結果、不快な症状がなくなるのですね。
その時に初めて治ったという状態になります。

決して、当帰芍薬散が黄体ホルモンを活性化させるとか、ただ単に身体を温めるとか、そんな1つの症状、問題に対して1つの効果といったような単純なものではありません。

ただ、不妊症の治療に関しては、体質に合わせるということだけでは成功しません。

体質に合わせるとか合わせないとか、どっちなんだよ!
って思われるかもしれませんが、それを詳しく解説しますね。

身体の不調は人それぞれです。

不妊症で悩んでいる人が、みんな冷えているわけではないです。
中には、反対にのぼせがあったり、頭痛がある人もいれば、頭痛なんかない人も。
月経周期の長さもバラバラです。

要するに人それぞれの状態。体質なんですね。

不妊治療の初期段階としては、漢方の原則にのっとって、体質を分析し、その体質を調整できる漢方薬を選びます。

その漢方薬が合っていれば、漢方薬が体質を調整し、その結果、手足の冷えや頭痛や、めまいなどの症状がなくなって、基礎体温なども整ってきます。

基礎体温は当たり前の事ですが、ホルモンだけで形作られているわけではないです。
風邪をひけば、熱が出て体温が上がります。
これは女性ホルモンの影響ではないですね。

身体全体の調子と関わっています。

ですから、漢方のように全身症状や全身状態を整えていけば、自ずと基礎体温が整ってくるのですね。

冷えなどの不快な症状がなくなり、基礎体温が整ってくるというのは、身体が健康な状態になったことになり、そこには、健康的な排卵や低温期や高温期の一定のリズムが生まれ、妊娠しやすい身体になっているのです。

通常の病気であれば、不快な症状がなくなれば、そこで「治った」ことになりますね。

ところが、不妊症の難しいところは、ここから。

不妊症は、病気ではないのです。
もちろん、漢方薬によって、妊娠準備のできた身体になっていますが、健康な状態になったから妊娠するわけじゃないですね。

実際に、うちの患者さんでも、身体はすっかり健康になり、今まで冬に3,4回風邪をひいていたのが、1回もひかなくなったという方もいらっしゃいます。

【 健康 → 妊娠 】

ではないのですね。

これには、男性側の問題や関わり合い方。食事や運動の問題。ストレスの問題など、他にもいろいろありますが、漢方治療の方法も変えていかないといけないのです。

漢方は体質に合わせるものですが、その体質から、妊娠のきっかけを与えるために、身体を揺さぶったりします。
う〜ん、訳がわかんないですね。

簡単に言うと、整った体質から、あえてバランスを崩すのです。
もちろん、漢方薬自体が、体質を整えるものなので、バランスを崩しにいくと言っても、的はずれなことはしません。

その人の体質を踏まえつつ、やや持って行きたい方向へリードするといった感じ。

例えば、高温期の中盤から現在の体質に合っている漢方薬よりも、やや補温(温める)がある漢方薬に変更してみたり、月経から排卵までに身体を緩の方向へもっていき、排卵直前だけ、補温、補血のもので高温期への移行を促したり。

これは、誰にでも効果のある高温期を延ばす漢方薬があるとか、排卵の漢方薬があるとかといった話ではありません。

あくまで、元の体質からはずれないように、ちょっと刺激を与えて、妊娠へのきっかけをつくるのです。

体質から大きく外れた見当違いの漢方薬は使いません。

体質の方向性を妊娠方向へ漢方薬にリードさせる。
時折、こういった刺激を与えることによって、健康状態で安定して足踏みしている不妊から、妊娠へと促します。

漢方薬は、体質に合わせて体質を整えることが大前提ですが、不妊治療に関しては、こういったテクニックも必要なこともあります。