漢方薬は副作用すら次のステップにつながります。

漢方治療をやっていて、焦ってしまうのは、1ヶ月飲んでも、な〜んも変化がないこと。
この状態は、漢方薬を飲みはじめてから、
副作用のような悪い症状が出る事よりもキツイです。

それはなぜでしょうか?

漢方に関して一般的に、よく勘違いされていることがあります。
それは漢方薬は「3ヶ月〜6ヶ月飲んでいると徐々に効いてくる」というもの。

これは全くのデタラメ!

僕は漢方の勉強に新しい西洋医学の理論と融合させながら説明しているちょっとキワモノ系の漢方の本から、
ほぼ漢字の古典の理論を書いたものまで、
ありとあらゆる漢方の本を読みあさり勉強してきましたが「漢方薬が3ヶ月〜6ヶ月かけて効いてくる」
なんてことはどこにも書いていません。

おそらく、漢方の理論を知らない、
もしくは理解できなかった医者か製薬メーカーあたりが、

「人工物できつい作用の新薬は効果が早く効くように作られている。
漢方薬は自然のものを使っているので、作用が穏やかなので、効果が現れるまで時間がかかる」
みたいな勝手な理屈をたてたのではないでしょうか。

なんにしろ、漢方薬が少しずつ効いてくるといったような説明はウソです。
だって、漢方薬の元々、活躍した病気は風邪やチフスなど、
あっと言う間に死んでしまう病気を治療するところから始まっているからです。

だから、漢方薬が時間がかかると思っている先生は、
まんま、漢方は素人と証明しているようなものですね。

漢方薬が効くまでの時間は、漢方薬を処方する先生が、
どう体質を判断し、どの漢方薬を選んだかによります。

漢方薬は、体質に合わせて選びます。
その体質というのは、簡単に言えば、症状です。
(厳密には症状だけではないですが)

漢方薬を飲みはじめてから元の症状から、どう変化していくかをみていきます。

その変化をみて、今の漢方薬が体質と合っているのかを判断します。

症状の変化から、体質と合っていないと判断すれば、他の漢方薬に変更します。
だって、漢方薬って500種類以上もあるのです。
合っているかどうかもわからない漢方薬を3ヶ月もチンタラ待ってるヒマはありません。

そうやって、常に揺れ動く体質にあわせて漢方薬を変えていくのです。
だから、漢方薬を飲み始めてから悪い症状が出てきたとしても漢方では、
変化の観察ができるので、次にどう調整していけばいいのかが見えるのです。

だから一見、副作用のようにみえる症状の変化も漢方治療にとっては、
次のステップに進むヒントとなるのですね。

悪い症状は、どんな影響で起こったのか?
それを考えていけば、自ずと次ぎに処方すべき漢方薬がみえてくるのですね。

となると、最も問題になるのは、よくも悪くもない変化のない状態。

これは困り者です。

変化がないので、次の一手をどう打てばいいのかがわかりません。

もちろん、3ヶ月〜6ヶ月もかからないといっても、
効くまでに時間がかかるということもあります。

身体が変化する期間は決まっていませんので、長く飲む必要があるケースもありますが、
体力が、よほどない高齢の方でない限りは、1ヶ月でなんらかの変化がありますので。

まずダラダラ続けることよりは、なにか変化を起こしていかないといけません。
なので、

「1ヶ月飲んだけど変化がない」

これが一番、考えところなのですね。
だから、悪い変化は、病院の副作用と違って、
かならずしも悪いことではないということですね。

うちでは、よくなかった変化も遠慮なくドシドシ、言ってもらってます。

変化がなかった場合、うちでは3つの方法をとっています。

1つは、元の漢方薬に違う漢方薬か生薬を付け加える。
漢方では加減といって、違う生薬や漢方薬を合わせて効果を変えていくことができます。

また、この変え方は、まるっきり初めの漢方薬を無視した変更ではなく、
ある程度、前の漢方薬の性質を引き継ぎつつ変更していくので、次の身体の変化を観察しやすいのです。

少し説明すると漢方薬はたくさんの種類がありますが、
その中には、ある似通ったグループの処方群があったり、
上下関係の処方群があったりと、いろいろな関係でつながっています。

なので、漢方薬を変更する場合、基本的にはそのつながりを辿りながら次の漢方薬を選んでいきます。

2つ目は、漢方薬自体の変更ですね。
ただし、これも先ほどと同じで初めに体質判断したものが合っていることが多いので、
まるっきりグループの違う漢方薬には変更しません。

前の漢方薬の性質を引き継ぎながら。ですね。

3つ目は、ちょっと飛び道具的な方法ですが、
体質から大きくはずれないようにしながら、
あえて強めの漢方薬を使って、身体を揺さぶるのです。

僕はこれをよく不妊治療で使います。

不妊治療は、治療とよんでますが、病気ではありません。
場合によったら、特になにも症状や問題がないのに妊娠はしないということがあります。

その場合は、基礎体温や今までのホルモン剤を飲んだ時の反応なども聞きながら、
あえて、やや体質からずれた漢方薬を使って、持って行きたい体質に誘導するのです。

体質に合っているようで合ってないようで・・・。

不妊症だったら誰でも、当帰芍薬散とか温経湯とか、
病名だけで処方し体質に合わせることすらできない先生は、このやり方はしないほうがいいです。

こんな感じで良いも悪いも変化がなければ、いろいろな漢方戦略を使って、
妊娠する身体づくりを目指すのですね。

こういった戦略が無数につくりだせるところが漢方のおもしろいところです。

副作用の悪い変化も次の治療にかならずつながっていくのですね。