漢方と病院の不妊治療を併用すると妊娠確率が上がるか?

不妊症の相談でうちにはじめて来られた時は、すでに病院の治療をしているケースが多いです。

病院の治療を続けていたが、どうも、うまくいっていない感じ。
それでネットでいろいろと調べて見たら、うちのブログにいき当たった。
というパターンが多いようですね。

漢方での治療を始める時に気になるのが、
病院の治療も併用したほうがいいのか、どうかが気になるところです。

うちでは、併用したほうがいいとか、しないほうがいいということは言ってません。

患者さんの考え方におまかせしています。

ただし、何もわからない状態で、ただ単に良いとか悪いとかは判断できないと思うので、
判断するためのアドバイスはさせてもらっています。

病院の不妊治療との併用でよく誤解されているのは、
併用したほうが妊娠の【確率】が上がるのじゃないかと考えてしまう事。

2つの治療を並行して行えば妊娠の確率も2倍になるような気がしますね。

残念ながらそんなことはありません。
西洋医学と東洋医学(漢方)は医学の性質が全く違うので、
却って邪魔になることもあります。

じゃあ、次に妊娠の確率を考えてみましょう。

実は西洋医学と東洋医学(漢方)では確率の考え方が違ってきます。

西洋医学は同じ病院に来ている中の患者さんの3割の人が妊娠するように治療します。
東洋医学(漢方)は、一人の患者さんが妊娠するかしないか0%か100%。

どういう事かというと、西洋医学は、例えば100人の人に同じような治療をすれば、
30人の人が妊娠する治療をします。

だから、治療の方法は体質などによって変わることはありません。
ホルモン治療、AIH(人工授精)、IVF(体外受精)
それぞれのステージでどの人にも同じような治療をします。

使うお薬も排卵誘発のクロミッド、注射のHCG、黄体系のルトラールなど、
どこの病院に行っても、ほぼ方法は変わりません。
ホルモン剤の名前が変わることがありますが、
それは、製薬メーカーさんが変わってたり、つくられた世代が違うもので内容的には一緒です。

IVF(体外受精)は病院によって微妙に投薬する薬の種類や技術が変わりますが、
同じ病院に通っている人は、ほぼ、皆同じやり方で同じ病院内で体質によって治療方法を変えることはありません。

病院での妊娠の確率は、簡単にいうと、
その病院で通っている100人の中の30人に自分が入る事ができるかどうかの確率です。

ある程度、決まった治療方法の中であなたが30%の中に入れれば妊娠するし、
入らなければ残りの失敗する70%の中に入るだけです。

西洋医学(不妊症に限らない)では、皆に同じ治療を施してその結果、
治ったのは全体の何%だったかというような確率の考え方をするので、
失敗したからといって、その人だけに合わせた治療があるわけではありません。

その人に合わせて変えるにしても元々、使える薬の幅が少ない上にある程度決まっていますので
「ちょこっと変えてみる」か「注射を打ちまくる」といった感じです。

どちらにしても、体質をみて、失敗原因を考えるということはしません。

漢方は、一人一人の体質は違うと考えるので、
極端に言えば、一人一人違う治療になります。

昔、うちが店をやり始めた頃は、思ったよりも妊娠していかれるので、
妊娠率を出して宣伝しよう!みたいに考えましたが、やめました。

統計学をちょっと知ってる人ならわかると思いますが、
治療の確率を正しく出そうと思ったら、みんなに同じような治療をしないといけいないのです。

西洋医学と同じように不妊症であれば、みんなに同じ種類の漢方薬を使って、
それで「100人中、何人が妊娠したか?」という計算をすれば妊娠率が出ますが、
それって同時に本来の漢方の治療の方法を放棄していることになります。

だって、漢方は一人一人の体質に合わせますから。

小林さんがAという漢方薬で妊娠しても、
同じ不妊症で悩んでいる山本さんがAの漢方薬が合う体質じゃないからです。

山本さんはBという漢方薬が合い、
田中さんはCという漢方薬かもしれません。

だから、治療がバラバラなので「不妊症」という、くくりにはできないのです。

漢方の場合は「この漢方薬なら不妊症に使うもの」とは決まっていません。
病院によっては、当帰芍薬散をそういうものだと勘違いしている先生もいますが・・・。

妊娠させる効果のある漢方薬など存在しません。
また、どんな体質でもホルモンを活性化させる漢方薬もありません。

漢方薬で体質を整え、その結果、妊娠しやすい体質をつくるのですね。

いつでも妊娠可能な体質にしておいて、
今度は、生活の中でできることを行って、妊娠しやすいようにします。

漢方薬は、よくなった結果、「体質に合っていた」と判断できるので、
変化をみて、どんどん再調整していかないといけないのです。

漢方は陰陽の考え方で絶対的に「良いもの」とか「悪いもの」はありません。
良くなっても悪くなっても変化があったと考えますので、
例え良くなったとしても、体質が変わるので、それに合わせて漢方薬も変えていくのです。

漢方では「うちの【店】では妊娠確率が30%以上ですよ!」ではなく、

「一人一人の患者さんをどれだけ早く100%に近づけることができるか」になります。
病院は100人のうち、30人以上が妊娠するかどうか。
かなーり確率の考え方に違いがあります。

あっ、ちなみに病院で東洋医学的な問診もとらず、体質も判断せずに処方している漢方薬は、
この記事内容の【漢方】には入りません。
ただ、漢方薬を出してるだけなので、
そういった漢方薬はラッキーで当たるか、気休めとお考えください。